粗大ごみの生成にかかわる要因に関する研究
鹿児島市と宮崎市を事例として
須藤 宏樹
ごみとは人間の文化が生み出した産物である。したがって、ごみが生み出されて行く過程、つまり人間活動を研究することによってごみが生成される量、種類、場所など社会システムにおけるごみの性質を理解でき、そのごみを生み出した原因である人間の特徴を推定でき、結果的にごみ問題に対する答えも導かれるはずである。よって、この種の研究の大きな目標はごみという物質の社会的性質によってどのように人間が、社会が見えるのかということになる。この研究はその大目標に対する第一歩で、研究対象も粗大ごみに限定し鹿児島市と宮崎市を対象地とした。そして「廃棄される耐久消費財の状態・性能を一定にした時どういう条件下でより粗大ごみが生成されるのか」という目標に向かって分析を行った。

この研究では平成9年度中に鹿児島市で、平成6年中に宮崎市でそれぞれ収集された粗大ごみの収集記録を使用した。なお、収集システムの違いにより粗大ごみとして収集される耐久消費財にも両都市間に違いが出てくる。宮崎市では大型のものしか粗大ごみとして収集されないが鹿児島市では小型のものも粗大ごみに含まれている。このため全体の粗大ごみをまず大きな6グループ、それをさらに細分化し鹿児島市では17、宮崎市では16に分類した。

具体的な研究課題として2つの方向から粗大ごみの生成要因を探る。1つ目は鹿児島市の都市部と郊外を比較して粗大ごみの生成に関して違いがあるのか、またそれらの生成要因は何であるのかという点である。2つ目は居住スペースと粗大ごみの生成量の関係に着目した。つまり居住スペースが狭くなればごみは増えていくのかという点である。この粗大ごみに関する2つの課題には地理情報システム(Geographic Information System,GIS)が有効的な分析手段となる。GISを用いる利点としては粗大ごみの発生場所といった地理情報を数値化しそのままデータベース化し、傾向を視覚的に捉えることができること、分析単位が必ず空間上の位置を量的な属性として持っているため、様々な空間統計値を計算できることなどである。

都市部と郊外における粗大ごみの生成の違いについての分析では、まず鹿児島市の各地区ごとにおける1km2あたりの人口密度を算出し、5000人/km2を境に都市部と郊外2つに分類した。そして、各地区ごとにおける17種別ごとの粗大ごみの生成量をだし、都市部と郊外それぞれの地区における17種別ごとの100世帯あたりの粗大ごみの生成率を算出し、比較、分析を行なった。この結果、ほとんどの品目において都市部が郊外より高い値を示した。したがって『人(世帯)の多さ』が生成要因において最も重要な要素であると言える。居住スペースと粗大ごみの生成量の関係についての分析では鹿児島市内258地区(東桜島地区を除く)と宮崎市内281地区の100世帯当りにおける粗大ごみの生成率と1ha当りの世帯密度(以下「世帯密度」)を算出し、それぞれの関係について分析を行なった。ただし世帯密度は居住スペースを問題としているため各地区の総面積ではなく住宅地のみの面積を基準として算出した。両都市の結果を比較してまず言えることは収集システムが異なるため生成率の違いは出ているが、全体的に両都市の生成のしかたが相似しているという事だ。具体的に言えば世帯密度が50程度までは生成率が世帯密度とともに上がるがそれを過ぎると生成率が下がっている。つまり居住スペースが狭くなってもごみは増えていかないということである。この結果から『居住スペースの狭さ』は生成要因として重要な要素であるが、『居住スペースの狭さ』という粗大ごみを増加させる要因を打ち消す要素が存在すると推定できる。

分析をとおして『人(世帯)の多さ』というものがごみの生成要因において最も重要な要素であることは確かであるが、「人(世帯)が多ければごみは増える」というわけではなく、「人(世帯)が多くてもごみは増えない」という事も言える。すなわち、ごみの生成は『人(世帯)の多さ』だけで決まるものではなく、社会的・文化的・人間的な生成要因が数多く存在し、それらが複雑に絡み合うことによって決定されるということである。

 vspace=

 vspace=

 vspace=

九州芸術工科大学〕 〔環境設計学科卒業計画〕〔クイック アクセス