肥前浜宿建築技能堂
馬場 祥之
かつて、建造物には大工職人、左官職人、畳職人、建具職人など幾種もの職人が携わってきた。職人達は自らの業に誇りをもち、建造物を利用する使い手の側も職人の業を判断する価値観を持ち、そしてその価値観を職人達と共有することができていた。そうして評価されていく中で職人達の業は技として昇華されていった。職人達の技を育んできた建造物は伝統的建造物として職人達の技をいまに伝えている。伝統的建造物は、職人達や使い手が建築と密接な関係を持つことでその姿をいまに残しそして職人や使い手は、建築と密接な関係を保つことで何世代にも受け継がれる伝統と、人の手の温もりのある豊かな生活を享受してきた。この相互関係の根底にあるものは建築の基本理念であるものづくりではないだろうか。しかし、近年、経済が急成長していった中で建築の需要が急速に高まり、工場で量産された部材で組み立てるといったシステムが普及したために、そういった建築と人との密接な関係が薄れていき、職人と使い手との間に価値観の相違が生じていった。そして、将来建築に携わる人材を育成する現在の建築設計教育においては、設計の基本的な枠組みから大きくはずれたものはなく、ものづくりという基本的な教養が欠落した状況にある。

伝統的建造物は次々に取り壊され、職人達の技は継承されることなく歴史上の記録として記されるのみとなってしまおうとしている。職人の数は次第に減少し、伝統的建造物を残そうと努力する人々の願いも多大なコスト等の現実の前に崩れ去ってしまっている。

いま、人の手の温かみのある豊かな生活を求める人々や、建築の基本理念であるものづくりを学ぼうとする人達のニーズに応える場が必要である。

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九州芸術工科大学〕 〔環境設計学科卒業計画〕〔クイック アクセス