森から歴史を見つめ直す はじめに
旧世界の森の旅
1 「ギルガメッシュ」叙事詩の声 ーメソポタミア
2 森が青銅器を生んだ ークレタ島とクノッソス
3 繁栄のはてに ーギリシア(1)
4 鉄の時代へ ーキプロス島
Asahiro
森から歴史を見つめ直す ―序によせて (レスター・ブラウン)
問題提起:森林破壊は現代世界が直面するもっとも重要な問題の一つである。
近年の森林の破壊率
世界の年間森林消失面積:
1500万ha
中央アメリカにおける森林破壊率(1950-1980):
約40%
アフリカにおける森林破壊率(1950-1980):
約23%
ヒマラヤにおける森林破壊率(1950-1980):
約40% (国連による統計)
森林破壊により生じている問題点
・ 薪資源の減少、(エネルギー供給の側面)
・ 頻発する大洪水、土壌侵食、砂漠の拡大、 (国土保全の側面)
・ 土壌劣化→収穫量の減収、(食糧生産の側面)
森林消失によるエネルギー危機は、約20億の人々に影響し土地の荒廃を加速する。
先進国の人々にも、温暖化への対応など莫大な出費を強いる。
本書の目的
人類史を通じて、文明の勃興と消失、フロンティアの探求は森林の破壊と消失をもたらしてきた。本書の目的は、ただ将来に警笛を鳴らすだけでなく、現代文明が生き伸びるための希望と方策を考える場を読者に提供する。過去数千年の森と人類の関係を学ぶことで、大地を荒廃させる文明の悪循環から脱する教訓を得る。
本書の焦点
人類の重要な資源であった森に焦点をあて、森の役割と社会への影響を列証する。
Ex. 民族移動に森林資源の枯渇が起因しているという著者の指摘は珍しい。
文明の悪循環とは?
簡易に森林資源や豊穣な土壌を手に入れた社会は、当面、物質的に繁栄するが、人口増加と経済発展の速度がはやいほど、植民地をつくり、外交を展開し戦争に発展する。最終的には森林資源の枯渇に直面して文明は衰退していく。それを石油資源に代替したとしても、今日、世界の直面している事態は同じである。
はじめに
森と文明 ―
文明が成長するにつれて、森はつねに破壊されていく。
森に対する社会にニーズ ― 主要な燃料、建築資材
テクノロジーの革新に実質的に寄与し、現代文明への移行を可能にさせた。
文明の発展要因を「木」に求めるのは?
木は、熱源として人類に「火」を提供し、下記の事項等を可能ならしめた。
・ 寒冷地帯での居住
・ 多様な穀物の食料化
・ 陶器の製作
・
農耕具、手工芸用品、武器の製作 ・ 金属の精錬
・ 製塩
・
耐久性の高い建築資材の生成(煉瓦、セメント、石灰、漆喰、タイル)
・ 船の建造 ・
二輪馬車 ・ 初期の動力機関の燃料
木の恩恵
過去の文明の人々の木の恩恵に対する認識
・
プラトン:職人の技術や手工芸は全て鉱業と林業に由来する。
・
ルクレティウス:金属器が林業や木材の加工を可能にした。
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キケロ:木材が、食料、建築、船を提供し、四海への航海がローマに万物をもたらす。
・
ペネツィアの人々:森は、まさしくわが共和国の命運を決するもの。
・
ゲイブリエル・プラッツ(英):道具や器具は木と鉄でできて、鉄を精錬する木は最も重要。
・
ジョン・イーヴリン(英):イギリスにとっては、金よりも木のほうが遙かにありがたい
言語
シュメール人の楔形文字:"gis"
―「建築計画」、「型」、「原型」→古代ギリシャ:「棟梁」の意
ギリシャ語:"architecton"
―「指導的な立場の木工職人」の意 →現代の "architect"へ
"hulae"
―「木」=「第一次物質」と同義語
イタリア語:"legno" ―「木」=
かつては「船」を意味し「木」と同義語であった。
木は文明の土台そのものであり、古代の人々にとって最も重要な資源であった。
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