第46回  限界を超えて ー生きるための選択  、
D.H.メドウズ/D.L.メドウズ/J.ラーンダズ 、ダイヤモンド社(1992)
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 00年11月21日(火) 18:00〜 (岩本、山口、中村、仁木、音西、笹野、朝廣)

第3章 ソースとシンクの限界

第4章 有限の世界における成長のダイナミクス

第5章 限界を超えた地点からの引き返し ーオゾン層破壊の場合


レジメ Yamaguchi

第5章 限界を越えた地点からの引き返し- オゾン層破壊の場合(p.180-)   
■オゾン層破壊の事例:環境の限界を越え、それについて学び、そこから引き返した経験
・政治の境界線を越えた、科学者達の情報収集体制
・国連の役割:各国政府に対する中立的基盤の提供。第三世界の発言権の確保
・環境破壊的な、収益性の高い工業製品の破棄へと至ることができた。
■成長 - 増大するフロンの生産と使用(p.181)
◇フロンガス(クロロフルオロカ−ボン/CFC)
性質:無毒。安定性、不燃性がある。 利用:断熱材、冷媒、金属洗浄溶剤
◇フロンガスの消費量(図5-1、p.183)
■限界 - オゾン層(p.184)
・オゾン層:成層圏に存在。太陽光線中のUV-B(有害な紫外線波長)を吸収する(図5.2、p.185)
・UV-Bの性質、人体への有害性:有機分子を分解する波長
→皮膚ガンを引き起こす、免疫機能を低下させる、雪盲、白内障を引き起こす
◇UV-Bの動植物への有害性:UV-B増加は、生態系全体に影響を及ぼす
・単細胞生物の方が損傷されやすい。海洋では上層1〜2メ−トル(水中微生物の生息域)に入射する
→水中微生物の損傷、海洋生態系全般への影響
・緑色植物の葉の面積が減少、背丈が低くなる→光合成作用の低下。
雑草より栽培植物の方が影響を受けやすい
■最初の徴候(p.188)
・1974年のオゾン層に関する二つの論文の指摘:オゾン破壊の自動サイクル(図5-3、p.189)
・時間遅れ:フロン分子が分解されて成層圏に到達するまでに、15年かかる。
■最初の対応(p.191)
◇アメリカでの環境保護運動  ※他の国々ではフロン使用量の増加
・環境保護活動家によるエアゾ−ル缶の使用糾弾運動 → 売上60%減 ※企業の抵抗がある
・1978年、エアゾ−ルガスとしてのフロン使用を禁じる法律、制定。
■侵蝕 - オゾンホ−ル(p.192)
◇1984年南極ハレ−湾上空調査(イギリス)
・オゾンの40%減少が発見される(図5-4、p.193) → 他地点、多機関による調査も進む
◇“決定的証拠”(図5-5、p.195):塩素含有汚染物質によって大気組成が乱れている事実
◇南極大陸でのオゾンホ−ル形成
・南極上空の「周極性旋風」によって、南極上空の大気が閉じこめられ、他地域の空気と混ざらない。
・気温低い → 空気中の水蒸気が氷の結晶となり、成層圏まで上昇 → 塩素を放出する化学反応促進
・太陽光による反応
■二度目の対応(p.197)
・1985年のオゾンホ−ル告知 → 国連環境計画(UNEP)、環境団体による政府への圧力
◇1987年「モントリオ−ル議定書」
・特定フロン(5種類)の世界生産を1986年水準に凍結
・93年までに20%、98年までに30%の生産削減:主要フロン生産国をすべて含む36カ国が調印
※第3世界の調印がほとんどない
◇1990年「ロンドン協定」
・2000年までに、フロン生産の段階的撤廃(特定フロン+3種)
※基金設立により、第3世界も調印
※モントリオ−ルとロンドンの比較(図5-6、p.200)
■フロンガスを用いない技術の開発(p.202)
・冷蔵庫やエアコンの冷媒 : 代替物質/回収、再利用するための装置
・電子機器、航空機器 : 代替溶剤/洗浄作業が排除できる製造工程
・断熱材 : 代替気体
■オゾン層問題の教訓(p.204)
・地球規模での協力体制を成立させるための場、環境協定に柔軟性を持たせ、定期的に見直す必要性

読書会メモ

・ 限界のある成長と開発を考えるために、予測モデルは適当である。
・ 政治的決断に用いられる価値基準を、示すことができるかどうかが問われている。
・ 各々の地域において、人口、食料、技術の予測モデルを作成し、明らかになった問題点に対し、社会開発を推し進めることが重要であると考えられた。

 


asahiro@kyushu-id.ac.jp