第二回、4月28日 (火)   18:30〜20:30 (古賀先生、前田、岩本、皆川、朝廣) 戻る


第二回では、「地球環境報告」から前回出てきた疑問点を、各自調べてきたものを報告していただいた。

■なぜ女性と子供が栄養出張なのか?(岩本)

  1. 飢餓はどこで起こるか?

第一次産業従事者の割合の高い農村で起こる。その背景には、国家間格差、都市と農村の格差、土地の不平等分配による貧富差の拡大、家庭内における男女の位置づけの格差などが存在する。

 2.インドの農村に見る飢餓の状況 ー農村における女性・子供の位置づけー

農村女性の生活は、毎日が家族の食料を獲得する戦いである。

    2.1女性の飢餓率・死亡率が高いことに関係すると考えられる理由
        @女性は家事・子育てに関する責任を負う。
  
             (水くみ、薪割り、農作業・家畜の世話・炊事・住まいの維持)
          女性の労働時間は男性よりもはるかに長い生存のための仕事である
        A病気になっても医療機関の世話になる機会がほとんどない。
        B幼児死亡率が高いため出産回数が増える。
        C家庭内での食物の不平等分配
            例えば、女性のカロリーの平均摂取量は男性の三分の二(パンジャーブ州、労働量は男性以上)
            女性への労働負担の過多と食料の不平等分配は、風習や因習、その地域の文化に起因する差別が絡んでいる。村の階級制度の中で、女性の生命は家畜以下にしか評価されない場合が多い。

 2.2子供の飢餓率・死亡率が高いことに関係すると考えられる理由

  1. 母体が健康でない
  2. 乳幼児期に十分な栄養が取れない
  3. 女児の場合は男児と比べ、食事・養育・看護などの面で差別が見られ、死亡率も高い

■なぜ悪循環の起きている農村で人口が増えるのか?(皆川)

  1. 人口動態のプロセス
  2. 人工動態的遷移の過程は高死亡率、高出生率の状態から、まず死亡率が下がり、次いで出生率が下がるという段階的過程をみせる。先進国の場合は、これらの一連の動きが長期的に進行し、現在のような低死亡率、低出生率に落ち着いている。しかし開発途上国では死亡率の低下と高出生率の維持により、「人口爆発」といった問題が発生した。これによる生活環境の破壊は高死亡率、高出生率の段階へ逆流させる例が数多く見られている。

  3. 農村部での人口増加
    @「貧困」による人口増加
  4. 「富むものは富を得、貧しいものは子供を得る」という諺のように、人口と資本との結びつけたシステムが来られの行動を生むといえる。

    A「不平等」による人口増加

外資獲得のための大規模なモノカルチャーを行っている国では、耕地面積が食糧自給が可能な値であっても、商品作物の生産を行い食料不足を招く。また、土地所有の不平等から貧富の格差が広がるなど、南北問題をはじめとする政治的・経済的構造が絡んでいる。

    B女性の地位の向上と人口問題

女性に対する教育の充実や、妊婦と乳幼児の医療の整備、そして政治的な権利を付与して女性の地位を向上させれば、貧しい国の出生率が下がることが中米コスタリカなどで証明されている。しかし、家庭内のミクロな権力関係などの慣習が人口増加を促進していることもあり、一概に女性の教育と解放だけが解決法とはいえない。

 

1950年代の時代背景は何か?(前田)

第二次世界大戦の終了直後の時代であり、先進国では工業・農業の技術開発が促進し、発展途上国では植民地からの解放・独立が進み農業革命や、医療の普及が進んだ時代である。急速な経済活動とイデオロギーの対立がはじまった時代でもある。

■援助による他国への弊害は何か?(古賀)

途上国における貧困は慢性的な栄養不足に起因し、農村部では土地所有面積が少ないほどその傾向が顕著である。脱貧困を目的とした近代化は産業の発展による豊かな国民生活を保障するはずであったが、現実はそうはなっていない。商品作物生産のための土地利用と、大地主制は、農地の喪失・細分化・農民の小作化を進め、生活様式・自然の破壊をもたらし、大都市への農民の流入、スラム化、絶対的貧困相をつくりだした。
日本政府からの政府間援助(ODA)は有償援助・公共事業に偏り、日本企業に発注させるなどそのあり方に問題が多い。また、難民農民向けにはNGO組織による小規模・人的援助が主に関わっているといえる。

■砂漠緑化の取り組みはどうなっているか?(朝廣)

日本沙漠緑化実践協会
http://www.bekkoame.or.jp/~stsh/sabkidex.html
遠山正瑛 現在 鳥取大学名誉教授の紹介

第1回 「沙漠」と「砂漠」

 「石が少ない」土地を「砂漠」、「水が少ない」土地という広い意味で「沙漠」。沙漠には状態によっておおまかに5つの種類があり、砂沙漠・土沙漠・石沙漠・岩沙漠・塩沙漠。中でも砂沙漠と石沙漠は水はけがよく緑地化に適し、やり方によっては生産性の高い農地にする事が可能。 

第2回 沙漠と農業

「沙漠は不毛の地」の考え方は一部間違っている。場所とやり方によっては農地として生き返ることが充分に可能。中でも砂沙漠やゴビ(砂利)沙漠は水はけが良く塩害が起きにくいため、水さえ確保できれば農業を行なうことができる。また、沙漠特有の昼夜の気温差によって果物などの糖度が上がり、スイカ・メロン・ブドウなどは普通の気候の地域でつくるよりも甘くておいしい物ができる。

第3回 ポプラの木

今庫布其沙漠で植えられている木の大部分がポプラの木です。「大地に草を育てれば飛砂を減らし沙漠の拡大を止める事ができる」という考えのもとに、日本中からよせられた葛の葉のたねを苗にして沙漠に植えたところ、一晩のうちに放牧されている羊たちにほとんど食べられてしまった。そこで「ある程度の高さに成長したポプラの苗を1メートルごとに植えること」。ポプラの木は乾燥に強く、成長も早い。数年で大きく育った木を間引きして、切り出した木材で牧柵をつくり、その囲いの中で葛やその他の植物を育てれば過放牧による害をおさえることが可能になる。 また、切り残ったポプラの木はそのまま森として残って防風林となる。 こうすれば他の土地の森林資源を破壊する必要もなく、現地で生産的に問題の解決を図ることが出来る。 

第4回 点滴栽培

水は植物の栽培に欠かせないものですが、いくらでも撒けば良いと言うものではない。特に沙漠のように日光の照り付ける土地では、葉に付いた水滴がレンズのはたらきをして、葉を焼き付けてしまうようになる。また、砂地では水はいくらでもしみ込んでしまったり蒸発してしまうため、根が生えていない部分に水を撒くことはあまり意味のないことです。 ですからスプリンクラーなどによってむやみに散水すると、せっかくの大切な水を無駄にしてしまうことになる。ホースやパイプに等間隔の小さな穴を開け、植物の根元に直接水をポタポタと点滴のように少しずつ与えると水を無駄にする事なく、必要な分だけの水・そして必要なだけの肥料や栄養分を混ぜて与える事ができる。 

第5回 飛砂と草方格

沙漠が拡大するひとつの原因に飛砂がある。「草方格」と呼ばれるその方法はもとは秋田県の砂丘農家によって考案され、スイカ畑に使われました。藁を立たせてその一部を埋めて固定し高さ30センチぐらいにそろえる。その立ち藁を並べて60センチ四方のかべを作り、その四角の繰り返しで地面に連続した四角模様を作り続ける。これにより砂の移動の約80%か食い止められ、あとは種をまいたりしなくても、もともと砂に含まれた植物の種などから草木が勝手に生えてくる。

第6回 植物と食塩

砂丘農業と沙漠緑化の研究の結果、実は植物にも塩分は必要である。その濃度は1%。これより濃いと、植物の細胞は破壊され、悪い時はすぐにしおれてしまいます。

参考文献
よみがえれ地球の緑
佼成出版社
21世紀への直言 講談社
環日本海構想と地域開発 日本経済新聞社
沙漠緑化に命をかけて TBSブリタニカ
大地の砂;沙漠緑化の手引 日本沙漠緑化実践協会
沙漠を緑に 著者 : 遠山柾雄 出版 : 岩波書店

「自然に還る」福岡正信、春秋社、1993