1. 生物学からみた共生
1. 反芻動物と微生物の共生 2. 共進化 3.
対立する者の共存2. 進化と共生
1. 進化の抑止力 2. 人間と細菌の軍拡競争 3.
共生への道
3. 共生システムの成立条件
1. 均一系と不均一系 2.
システムとしてみたルーメン 3. 共生場の恒常性
4. 共生系とその破綻
1. ガイア的世界観 2. 地球温暖化現象 3.
人口食と自然食
5. 人は自然と共生できるか
1. 人間の二重性 2. フロー型とサイクル型 3.
人工共生
6. エコテクノロジー
1. エコテクノロジーにおける環境浄化 2.
工学と生態学 3. 生態系の自己設計能力
7. 生態系操作の方法論
1. エコテクノロジーの手法 2. 陸起源物質の行方 3.
陸−海リサイクルシステム
8. 共生の意味
1. 生態系と遺伝情報 2. 遺伝操作微生物 3.
人間にとって共生とは何か
以下、レジメ (Yamaguchi Hiroko)
1. 生態学からみた共生
1. 反芻動物と微生物の共生
・反芻動物の生存戦略------生産力のきわめて高い草の成分のうち、ほかの動物が消化できないセルロースを消化する微生物と共生すること。
・反芻動物の胃袋------第一胃(ルーメン)〜第四胃まで、胃袋が4つに分かれている。
※ルーメンの大きさ(ウシの場合)------約200リットル。
・セルラーゼ(セルロースを消化する酵素)をつくりだすことができるのは、細菌、原生動物、菌類、軟体動物のある種類に限られている。→反芻動物は、ルーメンと第2胃に住みついている細菌と原生動物がつくりだすセルラーゼによって、セルロースを消化している。
※ウシの場合、原生動物の数:100万匹/ml、
細菌の数:10億匹/ml
2. 共進化
・ 共進化------A種がB種に反応して進化し、B種は逆にA種に反応して進化すること。共生は共進化の1つの姿と考えられる。
例)花と昆虫の関係、食う─食われるの関係
・選択圧------異なった遺伝子型を含む集団の中から、より適応度の高い者を選び
出す力。食う─食われるの関係の場合、捕食者は被食者に対して、被食者は捕食者に対して、それぞれ選択圧として働いている。
3. 対立する者の共存
・ 被食者と捕食者の共存の機構(ラッケンビルの研究)------捕食者の活動力や能力の低下と、被食者の質と量の低下が、両者を共存にみちびくことを示した。
※
共存は、栄養状態の劣化や、食われる者の餌としての価値の低下や、活動力の低下という、一見マイナス要因と考えられるものによって支えられており、良好な栄養状態とか、餌生物の質の向上とか、高い活動力といった、一見プラス要因と見られてきたものは共倒れの途につながることを示している。
・ バランスの成立------
捕食者---ある程度飢えていて、活動力も低下している。捕食能力は概して不完全。
被食者---逃避能力は概して不完全。捕食能力に長けた天敵がいる場合は、卓越した増殖能力をもって損失を補充。
・ 両者の共存の共存の条件------被食者の捕食者に対する優先性。
例)ドーキンスとクレブス「生命とごちそうの原理」
2. 進化と共生
1. 進化の抑止力
・ 細菌を順次転送する実験------世代がすすむと、個体群全体としての比増殖速度
(単位時間あたりの細胞数増加の割合)は高くなっていきピークに達し、その後は世代が進んでも増殖速度は、ピークの値を維持する結果が得られた。(p41図5)
※なぜ増殖速度に限界が生じるのか、理由は解明されていない。
・ 遺伝子の他面発現------遺伝子群はばらばらにふるまうのではなく、互いに関連しあい同調してはたらく場合があるので、1つの形質を選択することによって、ほかの形質の変化も同時に引き起こす。例)デンプスターのニワトリによる実験
・ 多機能による歯止め------特定の機能や形態がほかのものとペースを保って変化する確率は極めて低く、このことが進化に抑制的に働く。
・ 種間関係による歯止め------種間競争は増殖速度の進化に対して歯止めをかけたと考えられる。(増殖能力と競争能力がトレードオフの関係)
・
2者培養では、突然変異体が元株を排除して定着するが、ミクロコズム(実験群集)による実験では、定着しない。
↓
・多種の生物間にはたらくネットワークが、群集の安定性に貢献しており、突然変異体の増殖(進化)が、生物間相互作用によって、幾重にも歯止めがかけられている。
2. 人間と細菌の軍拡競争
・ 抗生物質の使用------日本では昭和30年以降、平均寿命の上昇につながる。しかし、抗生物質の卓越した殺菌力が、人類を攻撃者にし、細菌を防衛者にまわす。→薬剤耐性菌の出現。※欧米では、抗生物質の使用を極力制限しようとする国もではじめている。
3. 共生への道
・寄生─宿主関係は、致命的な害を与える関係から、忍耐できる程度のわずかな害を授受する関係を経て、互いに耐性を持つ中立的な関係へすすみ、場合によっては相利共生的な関係へと進化する可能性がある。例)垂直感染
3. 共生システムの成立条件
1. 均一系と不均一系
・微生物が増殖速度の違いにかかわらず、なぜ常に同量ルーメン内に存在するのか?→ルーメン内は不均一系で、反芻動物が食べた草の中のセルロースは、微生物にとって、食物であり、同時に住み家で、増殖速度の遅い生物が滞留する。
4.共生系とその破綻
1. ガイア的世界観
・「ガイアの仮説」-----地球の大気、海洋、陸域の物理、科学的環境の形成には、生命の存在が積極的な役割を果たしており、生物と地球の両者の共同作業によって、生物にとって快適な諸条件が生み出された。
2. 地球温暖化現象
・
二酸化炭素、メタンによるとされる。(メタンは熱吸収効率が二酸化炭素の20倍)
・
全メタン発生量の約16パーセントが、家畜や野生動物の消化管発酵による。
(このうち、約80パーセントが、ウシに由来)
3. 人口食と自然食
・ 人工飼料の投与による、ルーメンシステムの破壊------
ルーメン・パラケラトーシス(第一胃不全角化症)→濃厚飼料による。
・
ウシ型とライオン型の栄養学を無視した飼料の投与。→効率と安定は両立しない。 |