第14回 生きのびるためのデザインヴィクター・パパネック晶文社(1974.8.15)  戻る

 99年1月27日(火) 18:00〜 (古賀先生、皆川、岩本、中村、朝廣)

第一部 デザイン、その現状

1. デザインとは何か?
2. 集団殺害
3. 高貴な俗物の神話
4. 〈自分でやる〉式の殺人
5. 現代のクリネックス文化
6. いんちき薬売りとサリドマイド


以下、レジメ 

生きのびるためのデザイン : ビィクター・パパネック

DESIGN FOR THE REAL WORLD ?HUMAN ECOLOGY AND SOCIAL CHANGE

Victor Papanek

  1. デザイン、その現状
  1. デザインとは何か? デザインの定義と機能複合体 P17〜、
  2. 集団殺害 職業としてのインダストリアル・デザインの歴史 p31 

■まえがき

・インダストリアル・デザインの有害性 ? 危険な自動車、くだらない生産物、環境汚染
・デザイナーが危険な人種になってきた。
・マスプロダクションの時代におけるデザインとは →

人間が自らの道具と環境をを形成するのに最も有力な手段

著者の問い

  • デザインは人間の本当の要求に答えるような道具とならなければならない。
  • 革新的で高度に創造的な、そしてもろもろの分野を貫いたものでなければならない。
  • いっそう強く研究を目指すものでなければならない。
  • デザインのまずい品物や構造物で地球そのものを汚すのをやめなければならない。
  • これまで多くのデザイン書が出版されているが、デザインの社会的意味とかデザイナーの責任については書かれていない。

著者の本書への期待

  • デザインのプロセスについての新しい考え方が生まれてくること。
  • デザイナーと消費者と間に物分かりのいい対話が始められること。
  • デザインは、若者が社会の変革に参加していけるような一つの道となりうるのだし、そうならなければならない。
  1. デザインとは何か ?
  • 人はだれでもデザイナーである。
  • ある行為を、望ましい予知できる目標へ向けて計画し、整えるということが、デザインの本質である。デザインとは、意味ある秩序状態(オーダー)をつくりだすために意識的に努力することである。

 

自然美 ; ばらの花、巻き貝、クジャク = 副次的な所産でデザインではない。

デザインは意味のあるもの(意図されたもの) 解答は常に無限にある。

ゲルニカ、落水荘、英雄交響曲等への感動は、意味に対して行われる。

 

  • デザインがその目的を充足するための行動様式は機能である。
  • 機能の概念には六つの部分がある

方法 : 道具、作業過程、材料の相互関係。

材料と道具は最適な方法で使われなければならない。

効用 : それは役立つか ?

要求 : 人間が本当に必要としている要求は何か ?

経済的、心理学的、精神的、技術的、知的要求に対して

目的指向性 :

ある目的を達成するために、自然や社会の諸過程を慎重にかつ計画的に利用すること。

デザインの目標の方向は、人間的、社会-経済的秩序に適合し、作用しなければならない。

連想 : 人は判断するときに、過去の記憶が是非の関係なく先入観として作用する。

美学 : 美学は一つの道具であり、最も重要な一つである。

 

  • デザイナーは六つの基本的な機能概念を超えていこうとする。 正確さ、単純さ。
  • 自然美に匹敵するような美的満足を見いだせる。 優雅な、複雑から単純へ還元。

 

  1. 集団殺害
  • デザインという仕事の究極の目標は、人間の環境と人間の使う道具、さらに人間自身をも変革することである。 

科学と技術とマスプロダクションの発達による急速な変化 細分化、専門化
デザイナーに説明能力が求められ、時にチームの統合者の立場とされる。

公正な分析的見方が必要となる。

  • 道具や機械デザインの始まり

イギリスでの産業革命 - デザイナーの関心は外観の装飾美にあった。
1919
バウハウス設立 - 生産過程としてのデザインの位置づけ。
1970年代、コンピューターやプラスチック工学など新しい教育の必要性。

  • インダストリアル・デザインの定義

インダストリアル・デザインとは大量生産品を分析し、製造し、発展させる実際活動である。その目標は、資本投下が大きく行われる以前に良しと認められるような形態を見つけ出すこと、そして、広く売れながら適当な利益を上げるような値段で製造され得る形態を見つけ出すことである。 (ハロルド・ヴァン・ドーレン)

  • 戦後の産業界が生み出したスタイリングと三つの廃物化のプロセス

 

工学技術的廃物化 (よりすぐれた作り方が発見された場合)
材料的廃物化 (生産品が使い減らされた場合)
人為的廃物化 (生産品を死滅させる場合、または消耗、修理不可)

  • 1970年代の社会の構造的な歪みによる、デザインの変化。

社会の階層化 貧富の差の拡大と中産階級の工業製品所有志向
世界的にみても持てるものと持たざるものの差の拡大

インダストリアル・デザインは専門分野の狭さや考えの狭さを横に貫いて総合をない遂げようとするものである。したがって、上述のような構造的問題について当然関心を寄せなければならない。

  • これからのデザイナーは、様々な分野での要求に対し、自ら取り組む義務がある。

安全な企業ではなく、第三の道でデザイナーが活躍しなければならない。
(第三の道
: 人間の生存にとって最も切実な諸要求に答えようとする何百という分野の組織)

 

asahiro@kyushu-id.ac.jp