2009年秋、時間生物学会の年会において、夏の学校世話人の伊藤・西出・吉種で今後のリズム研究について議論しました。その中で、同じ生物リズムを研究している若手の間で議論を交わす機会がもっと欲しいという話題が出ました。この時点で具体的な考えがあった訳ではないのですが、若手主催の研究会開催の可能性について構想を練りました。
幸運な事にそのすぐ後に時間生物学会の後援を頂ける事になり、研究会の開催に関する具体的な議論に着手致しました。その過程で時間生物学会のメーリングリストで有志を募り、現在の世話人が集まりました。最終的に、2010年夏に千葉県で"生物リズム夏の学校"と名付けた合宿形式の研究会の開催を決定し、現在準備を進めております。
大きく分けて以下の2つがあります。
若手研究者にとって、同じ悩みを抱える同世代の研究者と議論をすることは、自己のステップアップにつながる大切な時間です。しかし残念なことに、生物リズムを研究する若手の交流は非常に少ないという現状があります*1。生物リズムを専門に扱っている時間生物学会の年会に参加するのがほぼ唯一の交流の機会ですが、実験で忙しく参加できなかった、研究室が違う、基礎と臨床で話す機会がない、などいろいろな理由により若手間の交流が活発にあるとは言えない状況です。この夏の学校では合宿形式を採用し、懇親会やディスカッションの場を多く設けることにより、若手研究者のネットワークを広げる事を狙います。
この夏の学校では若手の定義を具体的に定めることは致しません。年齢に関わらず自分が若い研究者だと思えばどなたでも(PIでも)ご参加頂けます。若手向けの研究会ではありますが、若手を鼓舞してやろうという方の参加もお待ちしております。ただし基本的に中心となる参加者は、実際に日々手を動かしてデータを得ている、大学院生、ポスドクおよび若手教員になるであろうと想定しております。
リズム現象というキーワードは、様々な分野の人を引きつける魅力があります。扱っている生物種が進化的にかなり離れた物であっても、注目している遺伝子が全く違ったとしても、理解したいリズム現象そのものは本質的には近いはずです。またリズムを制御して病気を治したいという応用の観点からは医学研究と密接な関係を持ちますし、リズム現象に関わる物理学は生物リズムを意識して発展してきたという経緯があります。リズム現象は細分化しがちなサイエンスの分野に共通言語を与えてくれるテーマだろうと思われます。
この夏の学校は、特定の生物リズム(例えば、ほ乳類の概日リズム)について議論するだけの会ではなく、様々な周期、様々な生物種のリズム現象に興味を持つ方が気軽に参加される会を目指しています。またご講演頂く先生方も様々な分野のリズム研究者をお呼びする予定です。特に時間生物学会には普段あまり参加されない方の参加をお待ちしております。
また若手の間での議論を促進するために、少人数のグループに分かれて自分の研究を紹介する「グループディスカッション」の時間を設ける予定です*2。この機会を利用して普段話すことのない分野の研究者の中から、自分と興味の方向が近い研究者との出会いの場になることを願っております。