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SDGs Design International Awards 2019「最終プレゼンテーション/表彰式」前編

九州大学では、九州大学芸術工学研究院SDGsデザインユニットと未来デザイン学センターによって、2019年よりSDGsの解決に向けて世界順の学生から斬新なデザインやアイデアを募る、「SDGs Design International Awards 2019」を開催しています。
2020
314日(土)、九州大学大橋キャンパス多次元ホールにて、「SDGs Design International Awards 2019」のファイナリストによる最終プレゼンテーションおよび表彰式が行われました。このコンペティションは、「デザインで世界を変えよう!」をテーマに、デザインに関心のある世界中の学生に、世界の様々な課題に対する解決方法を募ったもの。次世代を担う若者に、デザインの力で人類の社会課題解決に貢献できることを実感できる機会を設けています。13カ国88大学223の応募が寄せられた中から、最終候補に残った5つの団体のプレゼンテーションが行われました。

本来は世界各地からプレゼンターが集まり、多くの観客が見守る中でのアワード開催となる予定でしたが、世界中で猛威をふるう新型コロナウィルスの影響を考慮し、当日会場へは日本在住のプレゼンターと関係者のみが来場。他国のプレゼンターおよび審査員は、世界4カ国(日本、中国、ドイツ、イギリス)6拠点を同時に中継をつないで出席するという体制が取られました。

 

最終プレゼンテーションの概要

1組目
「EXTENDED ISLAND」
中国浙江農林大学
Tang Zhongyu, Zheng Qingqing, Xu Mengting, Zhang Qing, Miao Wenqi

中国沿岸部では、都市化、産業化、人口の増加が進むことによる、土地の不足が問題となっています。このチームは、20年以上干拓を行う浙江省温州市霓嶼島を舞台に、この問題に取り組むデザインを検討しました。霓嶼島は、もともと漁業を生業とする島でしたが、2000年頃から経済発展とともに交通量が増え、埋め立てが盛んに行われるように。その結果、赤潮が頻繁に発生し、多くの底生生物の生息地が減少し、生態系に深刻な問題をもたらしてきました。

この問題を解決するためにチームが注目したのが、「海苔」。もともとこの島にあった海苔の養殖技術を使い、海苔移植浮島システム(LIFIシステム)を作り、海の生態系を回復し、海水を浄化し、潮間帯(潮の干満により露出と水没を繰り返す場所)を復活させて、持続可能な産業へと発展させるというデザインです。

この提案は、次のような段階を踏みます。
STEP1 海苔移植浮島システム(LIFIシステム)の構築
STEP2 生態学的にシミュレートされた潮間帯の形成
STEP3 持続可能な複合産業の発展

発表では、具体的な浮島の素材や設計の検討、どのようなタイムラインで潮間帯が形成されていくかが示されました。最終的には、水質や生態系の回復と同時に、漁業の復活やアグリツーリズムの展開による持続可能な経済活動の形成を行う、環境、経済、社会面での協調的な発展を促すデザインであることが示されました。

2組目
「The MOBILE FOOTBATH」
伊藤まゆみ / 東京工業大学
森川陽介
/ 九州大学
Hwang Jinwook / Aalto University

このチームが取り組んだのは、SDGsが掲げるゴールの一つである「人や国の不平等をなくす」という目標です。国籍や立場、所属を超えて、人々の会話や理解がすすむ仕掛けを作ることで、社会包含の第一歩となることを目指しました。

それにあたって想起されたのが、フィンランドで体験した「モバイルサウナカー」と、日本の「足湯」。両者には、“リラックス”という共通点があるのではないかと考えました。身体的な癒やしはもちろん、公共空間に無料で提供され、経済的にも排除されることなく利用でき、対話によって社会に属しているという精神的な心地よさを感じることができます。それを踏まえた上で、モバイルサウナの移動性と、足湯の気軽さ、性別や宗教を問わない点という、双方の利点を組み合わせてデザインされたのが、「モバイル・フットバス=移動式足湯」です。

設計にあたっては、
・メトロやエレベーターで持ち運べるコンパクトさ
・足湯に入る全員が一つの話題を共有できる最大のサイズ
・入っている人と、周囲の人が同じ目線になる高さ
・サステナブルで環境に負荷をかけない素材の選定
・あえて説明を置かない
など、ハード面ソフト面双方から「対話の生まれるデザイン」にトライしました。

当日は、実際にフィンランドのヘルシンキで、足湯イベントを行ったときの様子が報告されました。そこでは、立場や所属を超えて、多様なインタラクションが起こりました。大学では新入生、留学生、様々な学年の学生が学部の輪を超えて打ち解けたり、街角ではフィンランド人と移民がそれぞれの国の言葉を教え合ったり、ニュースで対立的に取り上げられる2か国の二人がお互いの国を理解しようとしたり。それぞれの属性で固まっていた小さなグループが、モバイル・フットバスの周りではほどけ、交わり、交流が深まったという実感が発表されました。

さらに持ち運びできることを活かして、災害後の避難所や仮設住宅で、少ない水で効率的に身体を温めたり、気分を楽にしたり、コミュニティを醸成したりすることに貢献するという、将来の展開可能性についても言及されました。

3組目
「Baby cocoon」
ダルムシュタット応用科学大学
Lilith Reiß

ライスさんは、「事故や災害時に助けが必要な人を守る仕組み」を考え、特に今回は、親に依存するしかない乳幼児を対象にデザインを行いました。前提となったのは、いつ起きるかわからないからこそ、日頃から使えるものであること。そこから考えられた「ベイビーコクーン」は、その名の通り、乳幼児を繭のような形状で保護しながら抱っこすることができるツールです。

まず赤ちゃんが人間工学的に座る姿勢をとることで、落ち着いて抱っこすることが可能で、親と直接触れる構造であるため安心感も増します。折りたたみ式のハードシェルにより、頭部を守ることできます。さらにしっかりと親の腹部に装着することで、親が両腕を自由に使えることも重要なポイントです。シェルには重要な書類を収納するためのポケットなども備えています。

使用シーンとして、緊急避難時以外にも、避難所などでのおむつ替え用や眠るためのベビーベッドとして使うことも想定されました。プライバシーを守りながら授乳することも可能です。

素材は、外側のハードシェル部分はポリスチレンやアルミニウム、カーボン等で想定。生地は耐水性と難燃性を考え、ポリアミドを採用しています。特に重要視したのは重量で、1〜1.3kgで製造できるように検討されています。

ライスさんは、ベイビーコクーンは、「抱きしめる姿勢」から着想を得ており、乳幼児を安全に守りながら、子宮の中にいたときのような安心感を感じてもらうことができるようにデザインしたと、発表を締めくくりました。

4組目
「TOMODACHI CONNECTION」
九州大学大学院 芸術工学府 九大芸工バングラディシュ調査チーム
田中遼太、若原千有希、小倉範子、原竹凌太朗

九大芸工バングラデシュ調査チームが取り組んだのは、SDGsのゴール目標「人や国の不平等をなくす」ことについて。バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプでの現地調査で、爆発的に増える難民と地元住民の間に軋轢が生まれつつある現状を見て、「ロヒンギャ難民と地元住民をつなぐ、交友関係見える化ツール」をテーマに据えました。

バングラデシュの地元住民とロヒンギャ難民は、同じベンガル語を話し、イスラム教を信仰しています。チームが注目したのは、ベンガル語を話す人達の間に見られる、独特の友人感覚。初対面の2人であっても、お互いに共通の知り合いがいることが分かるや否や、急激に打ち解けあう姿を何度も見かけ、子どもの頃から交流を持ち、関係を築くことで、将来起こりうる民族間の争いを未然に防ぐことができるのではないかと考えました。

そこでデザインしたツールが、「トモ・コネクター」。紐で繋がれたプレートには、ベンガル語で各々の名前が書かれています。このプレートは「友人―友人の友人―その弟」など人間関係を意識して繋いでいます。

使い方は、初対面で知り合った人や、友人の友人と仲良くなった時などの機会に、お互いのプレートを交換し、自分の紐に繋いでいくというもの。収集の楽しさを感じながら、自分の交友関係を可視化することで、共通の友人の存在を確認することができるようになります。これにより、初めは遠いと思っていた地元の子どもたちとロヒンギャの子どもたちの距離を近くすることを狙います。このプロジェクトでは、実際のプロダクトと同時に、将来の民族間の争いを回避し、手を取り合う関係を築くきっかけをデザインしています。

5組目
「Capricious Growth, Tenacious Growth」
中国浙江農林大学
Fu Yifan, Cheng Qiuyi, Zhao Yehua, Li Pengpeng and Zhou Yadi

このチームがプロジェクトを行ったのは、広西区防城港市にある昔からの漁村である勒山です。ここは、長年の台風被害や海面上昇、波による岸壁の浸食に悩まされてきました。生態系や環境への悪影響を与えないようにしながら、海岸線を保全するための方法が検討されました。

アイデアのヒントとなったのが、泉州市にある「洛陽橋」。北宋時代から崩落しない理由が、付着した牡蠣が橋の土台の強度を増していることにあると考え、古代から伝わる自然の方法を取り入れることに。そうして考えられたのが「牡蠣殻を使った防波堤と、牡蠣筏を使った人工的な岩礁による、二重構造の防波堤」です。これにより、昔ながらの方法を用いながら、波の浸食から岸壁を守ることができます。発表では、いくつかの地理的条件に合わせて、具体的な牡蠣筏の設計が検討されました。

それだけではありません。牡蠣を育てることで、海中の炭素が固定化され、栄養分が豊かになり、水質の改善が見込めます。それにより底生生物のバリエーションが増え、生物多様性が増えることが想定されています。さらに牡蠣の養殖による新たな産業の開発は、漁村が抱えている経済的な問題の解決にも繋がります。

このチームは、中国の古来から伝わる方法で、環境、防災、経済にまたがる、新しい問題を解決したいと考えています。実現した際の、未来の景観パノラマ図も準備され、プロジェクトの具体性が見える発表でした。
いよいよ最終審査が始まりました。注目の結果は、後編で。

催: 九州大学大学院芸術工学研究院 SDGsデザインユニット/九州大学未来デザイン学センター
催: 九州しあわせ共創ラボ(博報堂九州支社)