[概要] [何をしているかといいますと] [学会活動,プライベート,教育研究活動] [ver.2008][ver.2007] [ver.2006] [ver.2005] [ver.2004]

 

近況報告を兼ねて昨年の私の様子をまとめて見ました.

今年もよろしくお願い致します.


年の初めに2009年の私の近況の御報告

 

高木英行 (九州大学大学院芸術工学研究院)
815-8540 福岡市南区塩原4丁目9-1


TEL & FAX <+81>92-553-4555
e-mail   
URL  http://www.design.kyushu-u.ac.jp/~takagi/


概要

2009年の学会活動は,IEEE Systems, Man and Cybernetics Society(SMCS) のVice-President for Cybernetics, IEEE Transactions on SMC, Part BのAssociate Editor, そして, Technical Committee on Soft ComputingのChairをしていました. また5つの国際会議でplenary talkとtutorial talkを行い,IEEE SMCS Hungary Section ChapterでSMCS Distinguish Lecturerとして講演をした他, 3つの国際会議と4つの国内会議で講演論文の発表を行いました.

研究活動では,3月にNice大学で対話型差分進化の客員研究を3週間近く行い,その成果を2名の卒研生が引き続いており, シミュレーション評価と主観評価実験を行っています.また前から話を進めていました人工内耳フィッティングの福岡大学と の共同研究に対話型差分進化技術を導入することで動き始めました.
教育では,3月に博士2名と修士3名を出しました.M1, D1, D2生がいなかったため4月から学生が全員入れ替わり, 研究室文化を引き継ぐ学生なしで研究室の運営を始めました.

プライベートの出来事は,次女が4月から大学に進学して家では妻と二人の生活が始まり, 8月からフィンランドからの交換高校生を受け入れてホストをしています.年賀状を添付します.

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何をしているかといいますと:

人間要素と計算知能を組み合わせる「人間要素を取り込む計算知能」を目指しています.
これまでのところ,対話型進化計算(IEC)をこの研究方向の道具として主に使っており,研究室運営もこの方向に沿っております.
詳細は上記のver.2008か私のホームページをご覧下さい.


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学会活動,プライベート,教育研究活動

1月-2月:


日本の大学が最も忙しい季節です.センター入試試験,AO入試,一般入試前期日程,大学院博士後期課程入試の通常入試,および,受験生がいる場合は更に私費外国人入試と帰国子女入試が5~6週間の間に行われ,さらにその期間中に,卒業論文と修士論文の提出,審査,およびその発表会,期末試験とその採点,などが集中します.休日出勤が数回発生しますが,代休を取ることが極めて難しい時期でもあります.2009年3月に学位取得しました博士生2名の公聴会と,3月のフランス訪問研究までに済ませなければいけない確定申告が,これらに加わりました.

3月:


フランスのNice大学(Sophia-Antipolisキャンパス)のDr. D. Pallezからの招待で,3週間近く客員研究をしてきました.毎日キッチン付のホテルで自炊でしながらバスでの通勤でした.研究内容は,2008年度の卒業研究で目が見えてきた対比較ベースの対話型差分進化手法のシミュレーション評価です.

長年の研究テーマは,人間要素を取り込む計算知能で,対話型進化論的計算はその有力な手法です.対話型進化論的計算は,コンピュータが提示する画像や音などの出力をユーザが評価し,その評価値に基づいて更により良い画像や音を探索する最適化手法です.この手法の大きな課題の1つが評価を繰り返しながらコンピュータと協力し合うユーザの疲労問題です.特に音や映像のように時系列提示が必要な対象を扱う場合,過去の音や映像を記憶して比較評価することは疲労を増加させ実用的な問題があります.

差分進化手法のアルゴリズムの中に,対比較を可能にする特性があり,この点をうまく利用すると,対話型進化論的計算のユーザ疲労軽減を大きく改善できる可能性があります.2つの比較評価を繰り返す手法は,全対象を一度に比較評価する手法よりも疲労が少ないと考えられますから.この評価を,複数の従来手法と比較して評価する研究です.この成果は12月のNaBIC2009で発表すると共に,2009年度の卒業研究でさらにシミュレーション評価を進めると共に,主観評価実験を行っています.またこの研究で特許出願もしました

南仏Cote d'Azurは地中海の青さとアルプスや山地の白さが組み合わさった美しい地方です.Monaco公国はNiceの隣町のようなところですのでここにも休日足を運びました.Dr.s Pallez & Dartigues夫妻には自宅に何度もご招待いただき,手料理とご自慢のワインをいただきました.

(大学からの眺め)

4月: 

次女が静岡県立大学に進学したため,長女は東京,次女は静岡,そして福岡には夫婦二人という人生最終世代の家族構成に入りつつあります.後数年で次女も扶養家族からも抜けて独立することでしょう.老後という言葉も意識する世代になりました.

新学期の始まりで慌しくなります.前学期は学部向けの学術英語A,メディア情報処理・演習,芸術情報プロジェクト演習,コアセミナーの授業を分担し,大学院向けには生体情報数理学特論を分担しています.

その合間に,VancouverでのIEEE SMC SocietyのExecutive Committee meeting (役員会)に往復しました.SMC SocietyのVice-President任期は2008-2009までで,来年からは海外に出る回数は減ることになります.学会名称変更問題が別途時間を設けて議論されるなど,将来計画問題上の大きな動きが出ています.

また昨年9月に台南市にある長榮大学で講演したのですが,その縁で,長榮大学の複数の教員が大学間協定を結んでおられる早稲田大学の北九州若松キャンパスを訪れられた際に,私のところにも立ち寄ってくださいました.

5月:


5月には研究上の重要な出来事がありました.1つはノルウェーでの国際会議CEC2009で発表したこと,もう1つはその帰りにスイス連邦工科大学チューリッヒ校に立ち寄り国際共同研究の話をしてきたこと,もう1つは,イランからの訪問研究員受け入れです.

きっかけは,3月にNice大学での客員研究時に私のセミナー講演のアナウンスがあちこちに流れたのですが,それを見たスイス連邦工科大学Zurich校のDr. P. Harvathから非常に興味があるが地理的に離れていて参加できない,とのメールを受け取ったことにあります.彼は細胞生物学者と組んで異常細胞の検出に画像認識を行っている光学顕微鏡センターの研究者で,これまでの画像認識の自動化だけでは限界があり,専門家の視覚的判断を取り込んで認識性能を向上させたい,そのために私が行っている対話型進化論的計算技術が使えるのではないか,というのです.私も技術的な実現可能性は十分に感じましたし,何より細胞生物学への応用という学際的な興味がありましたので,ノルウェーの会議の帰りに立ち寄ることで話が決まった,というのが2番目の出来事の背景です.

朝4時にノルウェーのホテルを出てCopenhagenで乗り継いで11時半にZurich着.昼食後大学で学生向けのセミナー講演と共同研究の話し合いをしました.この結果,11月に20ページに亘る医学分野の二国間共同研究の申請書を作成し,両国の研究助成機関に申請しました.

ちょうど訪問した夕方の細胞生物学チームでは建物の屋上でワインパーティを行っていました.論文が採択されると毎回行っているのだそうです.私の研究室では,学術論文誌に採択された時には研究室メンバーとお祝いに食べに行くのですが,講演発表であってもパーティーをした方が,学術論文誌掲載の機会がほとんどない学部生や修士生の動機付けのためによいかもしれないと思った次第です.

イラン政府の助成によって, AmirKabir 工科大学 (Tehran PolyTechnic)で博士研究を行っているIlam大学の講師のMojtaba Karami氏が来日しました.私が受け入れ教員として9ヶ月訪問研究を行う予定でした.(実際には5ヶ月に短縮し10月帰国しました).協定大学ではないので授業料なしで学生としての受け入れはできませんが,彼は大学講師なので,芸術工学研究院は訪問研究員として受け入れ可能です.空港に迎えに行き,国際交流会館に入居させて,私の研究室への通いが始まりました.

6月:

上海での国際会議GEC Summit2009に参加しました.中国での進化論的計算の研究状況把握が目的です.私の分野の対話型進化論的計算の研究者も複数参加していました.が,会議自体は中国国内会議の様相を呈していました.特に会議最終日は発表キャンセルが続出で,最終日午後は,General Chairが4つの並行セッションすべてを1つにまとめ,発表者が残っている順に発表させるという状況でした.興味があってマークしていた発表も多くがキャンセルでした.学術への進歩よりも論文数稼ぎが目的になっているとの指摘がある最近の中国事情ですが,発表をキャンセルしても論文集に載れば実績カウントになる現状も一因であろうと思わざるを得ないような状況に,研究者の意識改革が必要なようです.

月末にはIEEE Technical Activities Board (TAB)会議へSMC Societyからのオブザーバーとして参加しました.TAB会議はIEEE傘下の全Societies/CouncilsのPresidentを主構成員としていて,会員数36万人のIEEEの最高議決機関の1つです.SMC Society President, D. Yeun, は,全Vice-PresidentにTAB会議参加経験を積ませるために順次オブザーバー参加させる意向があり,2009年は私がその一環として参加させてもらったものです.ここでの情報量と一Society内での情報量の差を改めて認識した次第です.

7月:

> 人間ドックを二日間受診しました.1995年に大学に移ってから,毎年人間ドックを受診しています.今年は,消化器系オプションにPETオプションを付けたため,二日間になりました.4年前初めてのPET診断で甲状腺癌が7mmという初期で見つかりましたので,定期的にPETオプションをつけることにしています.また,ドックオプションを順次交換選択して受診しています.

PETの話をすると,癌が見つかったら怖いという人がおられますが,私は逆です.生涯で癌になる確率は男性の場合二人に一人,女性は三名に一人の割合ですから,罹患することを恐れるのではなく,誰でもなり得るので早期発見が大事,早期発見できればラッキー,と考えています.これがPETを定期的に選択している理由です.

8月:


中国瀋陽で開催の国際会議HIS2009で1時間の全体講演をしました.この会議の直前に内モンゴルのフフホトで2日間夏休みを過ごしました.

以前,ポストドク雇用しました李林甫君の奥さん(阿拉坦図雅さん)が内モンゴル出身で,彼女の博士研究調査でフフホトに滞在する期間がこの国際会議の直前で,指導教員の前田先生らが到着される日に私もフフホトへ向かいました.

初日は北京空港での搭乗は定刻どおりでしたが,機内に入ってからがフフホト地方雷雨のため出発見合わせとのことで,機内で3時間待たされてからの出発でした.更にフフホトに深夜過ぎて到着するとスーツケースが配達されませんでした.手荷物だけでホテルへのチェックインが1時半です.さらに,翌日到着の荷物は配達してくれず,空港まで引き取りに行かないとダメとのことです.翌日は博物館見学と空港への荷物引取りで日中を過ごし,夜は,阿拉坦図雅さんのお母さん主催のモンゴル料理店での歓迎会に参加しました.二日目は馬に乗っての草原ツアーに参加しました.限りない平地を乗馬するのは気持ちよい経験です.馬は馬主の声にしか反応せず,走らせようとしても言うことを聞かないのに,馬主が口で走るように言うとすぐ走り出します.夕方市内に戻ると,普段使わない足全体に疲労感が残っています.確かに乗馬は運動になります.この日も,阿拉坦図雅さんのお母さん主催のモンゴル料理店の宴会です.8名で白酒6本を空けてしまい,その後色々思い出になることが起きました

8/11に瀋陽に移動し,国際会議HIS2009へ参加です.IEEE SMC SocietyのVice-President for Cyberneticsを担当している関係で,このHIS会議シリーズをSMC SocietyのCyberneticsの中心的な会議に位置付けるため,HIS2008開催のBarcelonaに立ち寄ってHIS Steering CommitteeメンバーとSMC Societyの主催会議にするための話し合いをしました.今回の瀋陽でのHIS2009での話しではまだSMC Societyの主催会議にするには時間が掛かりそうと判断した次第です.

毎年,8月は大学院入試で,2009年は8/19-21が試験日でした.この時期は出張ができません.

8/22にフィンランドからの交換留学高校生にMiljaが福岡に到着しました.次女が数年前に交換留学高校生として米国でお世話になったので,その恩返しの気持ちもあり,子供の空き部屋もあるので,ボランティア活動の一環としてホストを引き受けました.来年6月まで我が家から福岡女学院高校に通います.フィンランドでは日本語学校に行ったわけでも,日本語レッスンを受けたわけでもなく,独学で日本語を勉強した高校生です.にも関わらず,日常会話にはほとんど不自由しない会話能力と語彙を持っています.その語学力には,関心を通り超してびっくり.

9月:

8/29からハンガリーに飛び,SMC SocietyのDistinguish LecturerとしてSMC Society Hungary Section Chapterでセミナー講演を行うと共に,Budapest Tech Jubilee Conferenceで講演をしてきました.Prof. I. Rudasの斡旋で今回の講演の話が進んだのですが,この会議の始まる前には彼の60歳誕生日記念の講演会が開かれました.

ルーマニアからのこの会議の参加者であるProf. V. E. Balasが私の対話型進化論的計算の講演を聞いて,心理学への応用の可能性を打診したことが縁になって,彼女が組織する2010年7月の国際会議SOFAに参加することになりました.

帰国便は午後でしたので午前中に有名なトルコ様式のRudas温泉に入ってきました.大浴場,サウナ,水風呂,蒸気風呂,小浴場などの他,オプションでマッサージもある,日本でいうスーパー銭湯なのですが,建物の古さが桁違いです.何せ1556年建造ですから.

Budapestの会議に参加していたProf. S. Kovacsが,東京での訪問と岐阜での会議との間縫って,1泊で福岡に寄ってくれました.彼の学生が対話型差分進化のユーザインタフェース開発に加わってくれる話し合いをしました.

会津大学の趙強福先生が大会長をされた会津大学でのFANシンポジウムに参加し2件の発表や座長をしてきました.この国内会議と同時にAwareness Computingの国際会議を併設しており,ここで主要関係者が集まってのディスカッションに参加しました.これまでの研究方向がwebから新しい知識を得るcontents miningをはじめとする工学応用中心でしたので,人間がどのように気づくのか,という基礎研究,モデル構築など,今まで行われていなかった科学的アプローチにも取り組もうではないか,という新しい研究方向が生れたのはこの話し合いの大きな成果かもしれません.この点であれば,私の最近の興味である対話型進化論的計算を人間科学のためのツールにして人間を解析しようというアプローチが使えるかもしれません.また学会活動として,IEEE SMC SocietyでTechnical Committee on Awareness Computingを立ち上げ,今後の国際ワークショップの開催に向けた議論にも関わるようになりました.

出張は会津若松市までで終わり,東京と静岡から連休を使って娘二人が合流して東北地方の家族旅行をしました.次女が卒業して就職し,二人が結婚するようになれば,家族全員が集まって旅行という機会ももうなくなるかもしれません.

下旬に研究生が中国大連市から到着し,生活の立ち上げを始めました.正式には10月1日から研究室学生になります.12月の修士課程の外国人特別選抜に合格しましたので,4月から大学院生になります.

10月:

国際会議SMC2009へ参加しました.10/09夜に米国San Antonioに入り,10/10-11はExCom会議,BoG会議と学会運営の会議,10/12-14がSMC2010,その間10/13朝7時から私がVice-Presidentとして管轄しているCybernetics領域のTechnical Committee Chairsを集めての会議などを行いました.3月修了の博士生との共同論文をその合間に発表しました.

San Francisco空港での乗り継ぎ時には,1991-1993年のUC Berkeleyでの客員研究時にホストをしていただいたZadeh教授夫妻や,既に定年退職されている当時長女の小学校の担任であったMrs. Postに会うように時間を調整しています.3人ともお年ですし,San Franciscoでの時間余裕のある乗り継ぎ機会というのは残された人生でも多くありませんので,特に意識しています.今回は,San Francisco空港に朝着き,14時過ぎに同じBay AreaのOakland空港からSan Antonioに向かうことで,Berkeleyで1時間の時間を確保し,Zadeh教授とお昼の一時を過ごしました.もう少し時間があればご自宅を訪問し,Mrs. Zadehにもお会いできたのですが,もう90歳を超えるご高齢ですし,私も飛行機乗り継ぎの時間制約があり,適いませんでした.ここ数年,米国への渡航回数が減っています.私の分野の国際会議の米国開催が少なくなったように気もします.

一時的にメキシコからの交換留学高校生のMelssaのホストをしました.彼女のホストファミリーが交代する間の10日間を我が家で滞在するものです.フィンランドのMeljaとは同じ受け入れ機関からの要請なので窓口は同じです.性格が異なる二人が加わっての4人での食事は賑やかになりました.

11月:

広島での国際会議IWCIA2010に参加し,plenary talkを行いました.主催者はIEEE SMC Society Hiroshima Section Chapterですので,私も関係があります.同じSMC SocietyのVice-Presidentである国立台北科技大学の李祖添学長も参加されてplenary talkをされました.この4年ほど一緒にSMC Society活動をしている仲なので福岡にも立ち寄っていただきたかったのですが,時間が取れませんでした.

福岡大学医学部と人工内耳フィッティングの共同研究を始めていましたが,対話型差分進化手法に基づく手法をデモができるまでになりましたので,その話し合いをしました.本格的な第1歩です.人工内耳メーカが共同研究に参加してプログラムソースを公開しない限り,対話型差分進化手法を,人工内耳フィッティングプログラムと結合するわけにはいかないので,対話型差分進化手法が推定する人工内耳フィッティングのパラメータを人間が手入力する方法で2つのシステムを結合しようとしたのですが,この作業負荷が大きくネックになります.話し合いで学生がよいアイデアを出してくれましたので,彼の卒研が終わりしだい,そのアイデアの実現に取り組みます.

12月:

12/03-13にマレーシアMalaccaでの国際会議SoCPaR2009に2日間参加して90分のtutorial講演をし,台湾高雄市での国際会議ICICIC2009に2日間参加してplenary talkを行い,インドCoimbatoreでの国際会議NaBIC2009に2日間参加してplenary talkと1編の研究発表を行いました.第2回目のNaBIC2010は私がGeneral Chairとして12月に北九州で開催しますので,その広報用スライドも作成して最終日に報告してきました.

12/19-20に那覇市で開催された進化計算シンポジウムに参加し研究発表をしてきました.2010年は私が実行委員長として福岡で開催します.上記の国際会議と分野が同じなので相乗効果を期待し,北九州と福岡で日程を連続させて2つの会議を行います.

それやこれやで年賀状作成が遅れ,玉突きで,この2009年の近況報告作成が遅れてしましました.
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