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農のインスタレーション「稲(命の根)」・コンセプト

→完成図 →PDFダウンロード(コンセプト)  (構造図)

2007年11月 九州大学 知足美加子

 九州大学社会連携事業「芸術文化を取り込んだ先導的な食育と地域農産物のブランド化3」が、2007年12月1日(土)に行われる。(→ちらしPDF)今回は「お米の地産地消、粕屋米のブランド化」をテーマにしている。

 「稲」の語源は「命の根」とする説がある。「一粒も米を無駄にしてはいけない」など、主食である米に対して日本人は深い畏敬の念を抱いてきた。土が稲に姿を変え、命を支え、死によって命は土に帰る。農耕生活は宇宙の運行や天候の変化を身近に感じさせる。その日々の積み重ねの中で命を生み出す天地と稲の営みは神格化されてきたのである。今回のインスタレーションは、再生を繰り返す自然界の命の営みを「稲(命の根)」に象徴させて展示する。

 素材は、米、ヌカ、塩、そして粕屋名産であるミカンの葉、バラ等である。古くから米と塩は神前に奉られるほど大切なものである。造形表現内でもそのイメージを損ないたくない。自然の諸要素、宇宙の運行などを意識して、五大思想(地・水・火・風・空)、金剛界曼荼羅(成身会)、荒神八方除神札、八色和幣等の図像を参考にした。

 展示会場では藤枝守氏作曲による「植物の声」としての音楽が、琴によって演奏される。自然と共にある時の充足感や安らぎを与えてくれる琴は、神の依代(よりしろ)とされていた。言霊思想の「ことのは(言の葉)」は「こと(琴)」に通じるという説もある。(『言霊』鳥居礼・著)

 稲と同様に、琴の神聖さも作品内で表現できればと考えている。

 環境問題が深刻化する中、社会的側面での様々な取組がなされようとしている。「食」への意識は、環境問題も含め世界の社会動向を左右するほど重要なものとなっていくだろう。その局面を前に、まず私たちが取り戻さなければならないものは、風土と生活に密着した神聖なる精神空間ではないだろうか。この造形表現は、その問いかけである。

 

 会場において作品説明をする機会があった。そこで地球温暖化と貧困の問題が、「食」に繋がっていることについて触れた。このままのペースで温暖化がすすめば、100年後には海底のメタンハイドレートが溶け出し、地球上の水分は全て蒸発してしまうという。貧困の問題も私たちの食への意識が作り出しているといっても過言ではない。悪魔のような債務の罠、たった一本の国境線を越えただけで運輸費が非課税になるというグローバリゼーションの愚行、レートの暴力などが原因である。地産地消、自分たちの環境・風土を守り愛することは、これからの地球における常識になるだろう。単なる健康増進のためではない。次世代が生き延びるためである。根本的に社会を変えるのは政治ではない。今自分が何を必要とし食べるかという「生活上の選択」の蓄積なのである。
 この作品は、金剛会曼荼羅(成身会)と八色和幣を主に参考にしている。また五大思想を元に、米・ヌカを「地」、塩を「水」、バラを「火」、葉を「風」、御幣の回転を「空」にみたてている。大きな円周と中心円の幣の向きを変えている。外周を衆生から天へ、中心は天から衆生への動きである。私にとって命の循環、宇宙の運行そのものが神の現れである。自然への畏敬の念を途切れさせてはならない。その理法を人為でとめてはいけない。こういった祈りを作品にこめている。

イメージ図

九州大学社会連携事業(平成19年度)

「芸術文化を取り込んだ先導的な食育と

地域農産物のブランド化3」

九州大学社会連携事業(平成19年度)「芸術文化を取り込んだ先導的な食育と地域農産物のブランド化3」の一環として以下のフォーラムと演奏会を開催いたします。多数の方々に参加いただきますようご案内申し上げます。(参加無料です)詳しくは→チラシPDF 

第一部 10:00〜 

    中村基樹講演会「小さな文化」

第二部 11:20〜

   パネル・ディスカッション「粕屋米多面的ブランド化」

    12:30〜

    お米の時間 ー食べてみよう

    12:50〜

    「米作り体験」発表 ー久原小学校・山田小学校

第三部 13:30〜 造型表現

    「稲(命の根)」知足美加子

     13:45〜 植物と対話する音楽

    藤枝 守(作曲家)、西 陽子(箏曲家 琴と歌)  

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日時;2007年12月1日(土)10:10〜14:30

会場;JA粕屋 本所3階 催事会場

   (粕屋郡粕屋町大字大隈1229 TEL 092-938-2511)

  

第四部 「植物と対話する夕べの演奏会」

  藤枝 守(作曲家)、西 陽子(箏曲家 琴と歌)

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日時;2007年12月1日(土)18:00 開演

会場;サンレイクかすや 多目的ホール

   (粕屋町駕与丁1-6-1 TEL 092-931-3309)

   JR篠栗線 長者原駅より徒歩5分、駐車場あり

催;九州大学大学院農学研究院(農学部附属農場)

共催;粕屋地域フォーラム

パートナー;芸術工学研究院、JA粕屋、粕屋町、

      世代間連携による高度技術の産業利用研究会

問い合わせ先;九州大学農学部附属農場 

〒811-2307 粕屋郡粕屋町原町111

TEL 092-612-2862