「超感覚世界の認識とそれを可能にする道徳性について」(實松宣夫・著)から

シュタイナー文献引用部分の要約

参考文献「いかにして超感覚世界の認識を獲得するか」 

ルドルフ・シュタイナー・著 高島巌・訳 イザラ書房 1988年

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「真理に向かって認識を一歩進めようとするなら、善に向けての性格を三歩進めなくてはいけない」

超感覚世界を認識する可能性は万人にある。

よき指導者との出会うこと(自分の主観世界と超感覚世界とを混同しやすいため) 出会うためには、期待を抱いて努力し、待つこと。そうすれば導師の方であなたを見出してくれる。学習者は修行者となることを自ら引き受けよ。

「真理と認識」を「畏敬」し「礼賛」するという狭き道を歩め。 極めて容易に歩むことができるものは「軽蔑」「裁き」「批判」の道である。

尊敬(畏敬)の体験をすること。(尊敬される「人間」と、その人間に対する「尊敬の体験」を分離して考える)幼少期に「我々よりも高次のものがあるという深い感情」を体験することが大切である。「真理と認識への畏敬」単に理解するのではなく、生きた感情として保持すること。これは「勉学によっては達成されない。生活を通してのみ可能となる」

その人の弱点や欠点をみつけて非難したり攻撃したりしない。批判的判断を差し控える。批判や裁きの心に注目する瞬間を持ち、それとは正反対の歩みを開始する。 尊敬・敬意・畏敬などの感情は心性を健全で力強いものにし、認識活動に活力を提供する。

「内的生活の充実(開発)」

外界からの印象に駆り立てられている人の心性には中心軸がない。外に気晴らしを求める。内部に主導性を発揮するものを体験せよ。「内的生活が主導権を持ち続ける」

孤独に自己沈潜する時間を生活の中に確保せよ。 周囲に告知せず、修行と名目せず、静かに行え。

対象と関係ない全ての思考を排除する。楽しみの余韻を味わうのではなく、体験内容から明らかになる事柄を観察せよ

「我欲の追求」を慎め。我欲の追求は自分のため、真理と認識のためではない。自分のためではなく、世界のために自分を高貴な存在にせよ

「快と不快、喜びと苦しみは事物について学ぶところの機会(道具)でなければならない」快や不快を通して認識する存在にまで自らを高めよ。「求める認識内容が、あなたの知的財を蓄積するためなら、それはあなたを進むべき道からそらせる。人格を高貴にし世界を進化させるためのものならば、それはあなたを一歩前進させる」

「自分の行為や発言がどんな人の自由な決意にも干渉しないよう配慮する」

「自分自身を他人であるかのように見放しうる能力を身につけよ。批評家の冷静さをもって自分自身を観察せよ」

「たえず進化する高次の人間」とは

おちつきが具わる。行動に確かさが具わり、取り乱しがなくなる。外的事情の支配を受けない。怒りや不安、臆病から解放される。

もっと能力があればと嘆くことなく、できるだけのことをしよう、力を結集しよう、という姿勢になる「外界からの影響の範囲を、自分で規定できるようになる」 傷つく、怒ることが少なくなる。待たされている間にできる観察をしようという気持ちになる。

この進化を押し進めるものは、「内的平静における集中の力」である。自己の個人的な状況に依存しない純人間的な領域に自己を高める

思考生活の意義を信じなくていい、それについて考え、自分自身の思考にしたまえ

既存の先入観(偏見)を消去する方法とは

周囲の人に対して、どのような判断も下さぬことを試みる

「最上の修行は嫌悪を感じている人間について(判断を下さないこと)を行う場合である」

準備のための3つの要素

1「植物の二様相」 発生 生長 繁栄する様相/衰微 死滅する様相への注目せよ。正反対なものが対で提出されるべき。ふたつの経験は、心的世界の基本形象である。

事象の意味を穿さくし、思弁的知性の力で問題を処理・決済しないよう心がけよ(知的な人間への注意)「もっぱら生き生きと、健全な感覚と鋭敏な観察力を用いて、感覚世界に観入し、そして自分の感情に自己をゆだねればよい。事物が何を意味するかを思弁的な知性の力で決済しようとしてはならない。事物そのものに語らせねばならない」

「自己の内部に沈潜する静観態度とむすびついた芸術感覚は、霊的能力を発達させるための最上の前提である」

2「音」音が自分の心の外にある何かを告知しているという点に注意力の全てを集中する。全自然がその響きを通して人間にささやいている秘密を聴き取ること。

3「人の言葉」 直ちに反応するな。自分の内なるものを完全に沈黙させる習慣をつける。例えば自分とは正反対の思想に耳を傾けてみる。賛成や反対の心を沈黙させ、表面にはあらわれにくい意識の底の感情の微妙な動きに注意を集中する。

「傾聴」自分の意見や感情を完全に排除して聴くこと。これは、こどもなど、何らかの意味で自分より劣ると思う人の発言に耳を傾けるとき、さまざまな種類の優越感や知ったかぶりを抑制する力として現れる

開悟の段階 真剣に求め続けること

忍耐力を結集させて、この単純な修行を誠実にかつ持続的に遂行する人にだけに、内部に顕現する光を知覚する能力が与えられる。

「真実の修行のあり方は公開されなければならない」

「道徳的な力、内的誠実さ、観察能力を修行を通して高めなければならない」

「慎重な態度」

私自身の感情と思考には最高の秘密が隠されている。もっとも身近で確実な働きを手がかりとして接近せよ。

眼前のものに、見えない営み(過去と未来の姿)があることを洞察せよ

霊的観点からみれば、誕生と死は存在のひとつの変化の相であるに過ぎない

「楽に目標に達しようとして、ただ心に思い描き想像の中に保持するだけで済まそうとするなら大きな誤謬におちいる。そうして生じる直感は、多くの場合想像力が生み出す主観的な幻影でしかない」真理は、世界が主観による虚構の産物であることを承認しない

自分の修行を怠って、どこかの霊能者にみえるものをおしゃべりすることは不必要である。その人は超感覚世界と幻覚世界を区別できない

「修行者は常に自分自身を全く意識的に支配し、日常の事柄に対すると同じ確かさで、自分の体験に対して思考力を行使しなくてはならない。修行者がおちいる最大の誤りは、修行を通して均衡を失い、日常の事柄に対するまでそれまでの健全で明確な判断力を忘れることである」

「自分自身の道徳的性格の純化に努力し、修行によって得た認識を自分の個人的な利益のために利用しようなどと考えることがあっては決してならない。その認識が周囲に対して権力になりうるとしても、決してそのような権力を乱用してはならない」

修行者にはそうでない人より以上の道徳性が要求される

修行者は周囲の人について考えるとき、その人の尊厳や自由を妨げるような考え方をしてはならない。一切の人間的なものに対する畏れと恥じらいの感情が我々を充たしていなくてはならない。修行者は、他人の自己肯定意識を尊重せよ。思考でそう思うのみではなく、それを感情で生きよ。

修行者に必要な実践的観点

忍耐すること ささいなことへの感謝

欲求と欲望の沈黙  忍耐できないのは我欲の発動である

自分自身への誠実さ  自分に幻想を抱くな 欠点・弱点・無能さを直視せよ

好奇心の否定  理念を理想として生きよ

怒りや不機嫌の克服  事象の正しい観察のために

不安、無気力、恐怖、迷信、独断、虚栄心、功名心、おしゃべり、身分や性や人種などの外的特徴から人を区別する態度を克服せよ

徹底的に考え抜いたことを口にせよ   反対意見を述べるときは、それが当の相手にとってどんな意味があるかを見通すことができなければならない

温和さ

自分からの語りかけを中止して、周囲の心へ静かな注意を向けよ

「平静と孤独の中に留まれ。習慣化した思考の営み・感受性を停止させ、内的に全く静粛・寡黙になれ。そして忍耐強く持ち続けよ。そうすれば高次の世界が魂の眼と霊の耳を生み出してくれるだろう」

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