不法滞在外国人収容所の問題   >HOME

 1995年に、私はひょんなことから一日だけスペイン語の通訳を頼まれたことがある。長崎の大村にある不法滞在外国人収容所への付き添いだった。私もそれまで青年海外協力隊経験から国際交流のことを考える機会は多かったが、「国際交流」のなかで最もシビアで早急な対応を迫られているのは、この収容所内部で繰り広げられていることだと感じた。同室の収容者同士のトラブルや収容所自体のシステムの問題は、日本国内で論議される機会がないまま、帰国者の意識にしこりを残している。

以下は、長崎県大村収容所に在職経験をもつ黒木忠正氏(現在国際研究協力機構に勤務)のお話で、1999年12月のTracesシンポジウムの際、個人的な投げかけとして話したもの。

九大の毛利嘉孝さんのゼミで大村収容所に訪問することになり、私も参加させていただく予定(6月16日)

1)収容の長期化
 入国時、または入国後まもなくの逮捕の場合、所持金はほとんどなく、母国より送還費用を送金するしか手立てがない。(レートが違うため、母国側の負担大)
収容が長期化した場合、収容所にも負担が増す。(一人につき、一日千円程度必要)

 収容所内では内職などの労働は実施していない。(理由:現在内職自体が減っているのと、その収益が微々たるため)

 国費を使用して送還させた場合、そのシステムを逆に利用する人々が現れる可能性がある。(例えば、母国に所持金を送金後、故意に逮捕されて国費で帰国しようとす
る、など)現在は強制送還者の全体のうち1%弱が国費を使用。国費を使用する場合は、国と国との交渉となり、さらに時間がかかる傾向にある。

2)不法滞在者数の増加
 早急に、対処を講じる必要性がある

3)異文化、異なる言語による意思疎通の問題
 逮捕後、身辺整理のために入国管理者が、所持品の処理に立ち会うが、意思疎通に問題あり。
 
 収容所内では喫煙も許され卓球台なども置いてあるが、部屋の中での異文化間のトラブルは深刻。訴える場がないまま帰国してしまう。

4)不法滞在者の雇主とのトラブル
 不法滞在者の雇主が、彼らの足元をみて労働に見合う賃金を払わない場合がある。そのトラブルに関しても入国管理関係者が対処する。入国管理関係者の負担は増加する傾向。