読書案内
就職担当が薦める本のコーナーです.
推薦者:白石君男
- デイル・ドーテン. (2001). 仕事は楽しいかね?(野津智子訳)きこ書房.
- デイル・ドーテン. (2002). 仕事は楽しいかね?2(野津智子訳)きこ書房.
これら 2 冊の本には,仕事の行き詰まりに悩む一サラリーマンが,人生の達人マックス老人と偶然出会い,暇つぶしのような世間話のなかから仕事に対して目からウロコが落ちるような考えを聞かされ,それがいつの間にか仕事と人生についての講義になっていくという内容が描かれている.たとえば,「成功とは,右にならえをしないこと」,「明日は今日とはちがう自分になる」,「必要は発明の母なのかも知れないけれど,偶然は発明の父なのだ」など,印象深い考えが述べられている.会社の選択は自分の責任で行うことであるけれども,入社してからもさまざまな試練が待ち受けているに違いない.この本から先人の叡智を受けとり,試練を乗り切ってほしい.
この本には,単にお金を稼ぐ仕事をうまくこなす方法が書かれているのではなく,広く社会における自分の役割ということについての考えが述べられているので,この春から卒業研究を開始する諸君にとっては,上司を指導教官,サラリーマンを自分(学生)と置き換えてみると,理想の研究室のあり方を読み取ることもできる!
推薦者:上田和夫
- 橘木俊詔. (2006). 格差社会:何が問題なのか (岩波新書, (新赤版)1033). 東京: 岩波書店.
「格差を容認すれば経済効率が上がり,国が豊かになる」という「構造改革論者」の主張(幻想)が誤りであることを,明快に指摘した本.いったん,「ニート」「フリーター」になってしまうと,正社員への道が閉ざされてしまう理由も述べられている.
- 中島祥好,上田和夫 (2006). 大学生の勉強マニュアル:フクロウ大学へようこそ.京都:ナカニシヤ出版.
手前みそで恐縮ですが,就職に関することも少し書いてありますので,ご覧ください.
- 藤原正彦. (2005). 国家の品格 (新潮新書 141). 東京: 新潮社.
この本の前半の趣旨は,「論理は大事である.しかし,数学の公理系と同じく,論理の出発点は人間が決めるものだ.だから,いくら論理が正しくても,出発点が誤りであれば,とんでもない結論が『論理的に』導かれる.アメリカの政治が振りかざす論理の出発点だって,もとをたどればいい加減なものだ.だから,アメリカ流の『論理』と『合理性』では,社会の荒廃を食い止められない.」とまとめることができる.それではどうすればよいか.著者の答については,この本を読んでいただくこととして,皆さんも(著者のアメリカに対する評価が妥当かどうかも含めて)自分で考えていただきたい.
推薦者の私見としては,確かに,当事者たちの「品格」が問われるような出来事が最近目立つように思われる.ホリエモン騒動にしても,マンションの耐震偽造問題にしても,事情をよくわかっているはずの関係者が,「やっていることはネズミ講と似たようなことであっても,自分は直接手を汚さずに儲けることができるから,インチキな部分については黙っておいて得をしよう」と放置した結果であるのかも知れない.
- ウッド, J. M., ネゾースキ, M. T., リリエンフェルド, S. O., ガーブ, H. N. (2006). ロールシャッハテストはまちがっている:科学からの異議 (宮崎謙一訳). 京都: 北大路書房.
巷で利用されている心理テストには,きちんとした教育を受けた心理学者の目から見れば,根拠の怪しいものが多い.そのような怪しげなテストであるにも関わらず,熱狂的な信者をもっているテストの代表格がロールシャッハテストである.この本は,ロールシャッハテストのどこがよくないのかを科学的に論じている.訳者は,絶対音感の研究で有名な聴覚・音楽心理学者.なお,企業が就職試験の一部として,「適性検査」と称する心理テストを行う場合があるが,あまりムキにならずに,適当にいなしておくのが得策である(次の本も参照).よほど突飛な検査結果でない限り,面接の結果を重視して採用の決断をする企業が普通である.
- 村上宣寛. (2005). 「心理テスト」はウソでした。:受けたみんなが馬鹿を見た. 東京: 日経 BP 社.
「血液型人間学」,「ロールシャッハテスト」,「内田クレペリン検査」など,科学的な裏付けなしに広く用いられている心理テストを批判した書.上記のウッドらの本は,この本の種本の一つ.「だれか有名な人がよいと言ったから」,「みんなが使っているから」ということはテストの正当性を裏付ける根拠にはならないということも主張の一つ.なお,著者は,「性格は 5 因子からなることが実証された」と述べているが,推薦者は「せいぜい 5 因子,確実なのは 3 因子ぐらいと考えたほうが安全」という立場である.また,「血液型人間学」は,心理テストとして認められるための正当な手続きをまったく経ていないので,「心理テスト」のなかに含めることすら妥当ではなく,おみくじや空くじ多数の福引き抽選の類と考えたほうがよい.
- 城 繁幸. (2004). 内側から見た富士通:「成果主義」の崩壊. 東京: 光文社.
「評価」がうまく行われなければ,「成果主義」を導入した結果,かえって企業全体の業績が低迷してしまうこともある.富士通の人事部に在職した著者のレポート.なお,どんな会社でも,自分の会社に対して正反対の意見を持つ人が存在することが普通であるので,この本の内容も,特定の会社の評価として捉えるよりは,ある時期にある会社で行われた「実験」のデータとして捉えたほうがよいだろう.
- 林周二. (2004). 研究者という職業. 東京: 東京図書.
流行を追わずに本質的な問題を追い続けることが重要であるという観点から,研究者という職業を見つめた本.
- 木下是雄. (1981). 理科系の作文技術 (中公新書 624). 東京: 中央公論社.
大学でも,試験,レポート,卒業論文,修士論文の作成など,作文技術がものをいう場面は数多いが,企業ではさらに頻繁に報告書を書かされると考えておいたほうがよい.求職時のエントリーシートはこの第一歩である.この本を読んで実践すれば,事実と意見とを区別し,明快に論理を記述することで,自分の思考も明確になっていくことがわかるだろう.ただし,「作文さえうまくやれば,就職もうまくすり抜けられる」という意味ではない.日頃から自分の頭で物事を考えることがどんな場合でも役に立つので,作文もそのように利用すべきだし,そのような努力が結果にも表れるだろうということである.
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Updated on Tue, Oct 17, 2006 at 10:42 AM.