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2015年ミラノ国際博覧会~映像展示繚乱のイベント~

レポート 2015.12.12 Sat

ミラノ国際博覧会(報告)ミラノ国際博覧会は2015年5月1日から10月31日までイタリアのミラノ市で開催され、テーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを(Feeding The Planet, Energy For Life)」である。140カ国・機関がそれぞれのメッセージを展示に込めた。今回の博覧会もおおかた映像が主たる展示の役割を担っている。すでに映像はデジタル化が完了しておりフィルムによる上映は皆無である。表現技術的な特筆すべき新規性はなかったが、実用化技術の組み合わせやその応用により魅力的な展示が各所にみられた。
イタリア館は主催国館として存在感を示した。目玉は鏡張りの空間であろう。壁面は映像と鏡が交互に組まれて不思議な反射空間をつくりあげている(図1)。さらに天井も床面も鏡である。そのため無限に広がる擬似的な映像空間に入り込んだような錯覚を憶え、時として立ち位置に混迷をきたしてしまう。こんな中でイタリアの歴史や観光地の映像が展開する。このような鏡を使った展示はイラン館にもある。大型のLEDディスプレイは、館内の片方の壁面を入口から出口まで200~300インチ大のLED表示装置を緩やかな階段状に連続させている。その天井部分は三角錐状の無数の鏡が配され、観客が見上げた時に、壁面の映像が不規則に映し出されてグラフィカルな効果を生み出している(図2)。

日本館は最大の人気館として会期中220万人を迎え入れた。パビリオン規模が大きかったとはいえ、出展140各国・機関の1割以上が来場したことになる。和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたという時宜を得たこともあったが、それを完成度の高い展示表現としたことも要因である。展示シーン1では、ハーフミラーとプロジェクションマッピングによる四季の農村風景は、映像であることを忘れて擬似空間を体験できる。「あぜ道」を歩きながら風景の変化を味わえる(図3)。映像も先端的でありながら、演出の黒子として使われているさりげなさがいい。クライマックスはタッチパネル映像、大型映像とライブによるレストランシアター風の劇場である。タッチは卓上の「箸」をつかう。はじめて手に取る人も、慣れない手つきながら卓上の映像に触れる。進行約のライブとも相まって来場者は非常に満足度の高い時間を過ごすことになる。来場者の視線はおおかたテーブル天板のモニターに集中しているため、周囲壁面の大型映像とのリンクを楽しむ余裕はないようである。
ミラノ国際博覧会における映像展示には、いくつかのキーワードがある。プロジェクションマッピング、エッジブレンディング、マルチプロジェクション、ミラーワーク、ムービング、高精細LED、センシングなどである。1980年代以降にIMAXをはじめとする大型映像がもてはやされた時期もあったが、フィルムがデジタルとなり、大型映写機投影による大型映像は影を潜めた。大画面がなくなったわけではなくこれに代わる技法としてエッジブレンディングをつかった大型映像である。

図5)カザフスタン館のサークルビジョン
図5)カザフスタン館のサークルビジョン
図4)タイ館は床面大型映像と鏡面効果
図4)タイ館は床面大型映像と鏡面効果

タイ館は「コメ」に絞り込んだテーマ展示で明解なメッセージを発信していた。主展示は正方形の巨大なピットを覗き込む映像方式で(図4)、観客は4辺の手すりから下方を見下ろす姿勢をとる。この底の大画面はエッジブレンドによって構成されたものである。高精度の小型プロジェクターを組み合わせるため、解像度を維持したままで大型映像が実現できることになる。この手法はパノラマ状の大画面やサークルビジョンでもまた、同様に使われており中国館、カザフスタン館も同様にエッジブレンディングで連続した画面を実現している(図5)。先に大型映像と前置きしたが、必ずしも「大型」でなくとも小型高精細のプロジェクターの性能を維持したまま連続した画面をつくるときには、この手法が使われている。もちろんマルチプロジェクションと複数の映像を同期させる制御技術が併用されていることはいうまでもない。

図7)韓国館のムービング・ディスプレイ
図7)韓国館のムービング・ディスプレイ
図6)ドイツ館.手持ちスクリーンの映像
図6)ドイツ館.手持ちスクリーンの映像

ドイツ館の入館待ち動線で配布される段ボール製で小型の2つ折りの紙は、館内でスクリーンとして使用する。それはオリエンテーション映像で説明される。開くと20cm四方の紙の四辺に配置されたセンサーマークは、映像のフレーミングをコントロールすると同時にイタリア語と英語の判別もする。入館時に希望言語をきかれた理由が後に判明する。ここにはドイツの食 文化、食物と環境、食生活といったコンテンツが用意されている。スクリーンをかざす体の正面、紙スクリーンの傾きなどを感知して天地の調整やページのめくりがかなりの精度で映し出される(図6)。手持ちスクリーンの演出は1970年代にもあったが、当時のフィルムスライドとは比べものにならない完成度である。韓国館の主展示は、ムービング・ディスプレイである。レール上をモニターが動く展示は過去にもあったが、ここでの「動き」は2台の高精細大型ディスプレイをそれぞれ、産業用ロボットのアームにセットしたことが特徴である。ディスプレイは上下移動、水平回転、垂直回転その組み合わせ、ロボットの平行移動などが複雑にプログラムされて「動く映像」が構成されている。映像自体のメッセージ性よりもむしろ動的効果に注目される映像展示である(図7)。

ミラノ国際博覧会もふたを開ければ、各出展国は映像展示ばかりである。それが模範回というとなった今日にあって、映像なしの展示は新鮮な感覚よりもむしろもの足りなさを感じてしまうほどに、博覧会と映像とは不可分の状況となった。かつては物販中心だった発展途上の国ですら「イメージ」戦略を前面に出して映像展示出展の仲間入りを果たしている(図8、図9、図10)。