リズム知覚の基礎としての時間知覚に関する
精神物理学研究

中島 祥好

[introduction]
[聴覚とリズム]
[1. 時間分解能]
[2. リズムを生ずる時間間隔]
[3. 弁別]
[4. 尺度]


3 弁別 ( ”リズムを生ずる時間間隔 ”より続く )

  時間長の弁別は、基本的な問題として古くから取り上げられてきた。特に、時間に関して「相対的弁別閾(ウェーバー比)が一定になる」と言うウェーバーの法則が成り立つか、成り立たない場合にはどのような修正が可能か、と言う精神物理学の古典的な問題には、多くの研究者が興味を示してきた。精神物理学一般におけるウェーバーの法則はあくまでも大まかな近似に過ぎず、現実のデータが法則から系統的に逸脱することは今日ではむしろ常識である。しかし、ウェーバーの法則は、弁別判断を求めると言うごく基本的な手続きを手掛かりにして、多くの異なった物理的次元(あるいは主観的次元)を関連づけるうえで、極めて有効であるため、法則を表す式に少数のパラメーターを追加して、修正を行う試みがなされている(Baird & Noma)。本研究においても、時間長の弁別判断に関して、このような修正が可能かどうかを検討する。寺西(1984)は、過去の研究における聴覚刺激によって示された時間長の弁別閾をグラフにまとめている。その結果、400〜2000 ms の範囲において相対弁別閾が一定であるが、より長い時間、およびより短い時間に対しては、相対弁別閾が増加すると言う一般的な傾向が明らかになっている。2000 ms を超える時間長に関しては、相対弁別閾の増加は著しいものではなく、また、時間長が直接に知覚されるものではなくなるので、今回の考察の対象からは外す。一方、400 ms 以下の時間長に関しては、相対弁別閾が急激に増加するうえに、話し言葉や音楽に頻出するような時間長が含まれるので、何らかの近似式の当てはめが必要であろう。

(続く)

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