《文化継承の森づくり》 Forest Creation for Transmission of Culture
福岡県の英彦山を水源とする小石原川の水をたたえる小石原川ダムは、令和2年に管理開始されました。総貯水容量は 4,000万m3。主に洪水調節を目的としたダムです。ダム工事に伴い、コア(粘土質の土)を採取した跡地(コア山)は栄養分のある表層土を失ってしまいました。環境影響評価法に基づく環境アセスメントによる植栽が試みられましたが、植物の活着が進まず、度々土砂災害が起こるガレ場となっています。昨年、水資源機構が行ったコア山跡地の植生調査結果によると全体の植栽率は8割ですが、林立する防獣ネット内の苗木の多くは枯死しています。このような経緯をふまえ、2024年4月より科研B「災害後の森林環境と人間の関係性を再生する芸術文化的実践ー英彦山分水嶺を中心にー(代表・知足美加子)」の一環として、朝倉市に「三連水車を未来につなぐ文化継承の森づくり(以下「文化継承の森」と略す)」を提案し、コア山跡地の稗田地区に試験的森づくりを行うことが了承されています(詳細は以下の復興支援「MILL」ページの後半をご覧ください→https://mill-triple.cm/posts/asakura2024)。
私は2024年度に北海道のチコロナイ活動(アイヌ文化継承の森づくり)等のフィールドワークを通して、森林を観察し体験すること、および木を使うことで「森をデザイン」することが重要性に気づきました。また自然に関わる伝統文化や信仰における継続性や感情の共有が、コミュニティの再生に繋がることがわかりました。このような経緯をふまえ、朝倉市、水資源機構および九州大学農学部教授・渡辺敦史の協力のもと、コア山跡地の稗田地区に試験的に「文化継承の森づくり」を継続しています。植栽予定の樹木は、アカマツは「三連水車群」、カシは「黒川高木神社の沓形餅づくりの杵」、シュロは「美奈宜神社の獅子舞の蓑」の素材となる予定です。これらは、遺伝子撹乱がおこらないよう地域(英彦山分水嶺)の在来種としています。荒地に強いアカマツを最初に植えることは、森林遷移を鑑みても理にかなっています。2年かけて、英彦山修験道由来の歴史ある在来種実生苗、球果、挿木枝を採取し、九大圃場にて植栽準備を進めています。2026年2月22日に、朝倉市主催の植樹会が開催されました。育成中の苗は幼かったため、小石原川ダムの東峰村側に天道生え(九州の方言で自然発生した植物)したアカマツを移植する形で植樹会を行いました。今後、九大農学部、芸術工学部の学生たちも参加し、当該地の科学的調査および景観デザインを進めます。将来的には市民、特に子ども達が遊びに来て、50年後の未来を思い描く場になってほしいと願います。(*読売新聞にて紹介されました→記事リンク)→活動説明ポスター
→知足美加子「災害後の森林環境と人間をつなぐ芸術文化的実践ー文化継承の森づくりー」『芸術工学研究vol.41』2026年 pp.75-78
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