「アイヌの結婚式」(16ミリカラー、34分)

→戻る*民族文化映像研究所所有(レンタル可能 tel 03-3341-2865/ fax 03-3341-3420)

 アイヌの結婚式はここ数十年来行われたことがなかった。和人(日本人)の侵入以来、アイヌはシャモ(日本人)の習俗に従うことが常識とされていた。ところが北海道、勇払郡穂別町に住む貝澤妙子さんは、突然アイヌ式の結婚式をやりたいと言い出した。(花婿は隣町の沙流郡平取町二風谷の方)だが明治生まれのアイヌの古老さえアイヌ式の結婚式を見たことがない。二風谷の人々(萱野茂氏など)の見聞と、ユーカラ、ウエペケレなどの伝承をもとにして、徐々にアイヌ式の結婚式が再現された。

 まず婚約の儀式。花嫁の父はアイヌ語で火の神に祈る。「私は先祖のように上手な言葉で祈ることはできないけれど、どうか二人を守ってください。」結婚式の日、花嫁の母は娘の腰に一本のヒモを結び付ける。これは強制と暴力を象徴する貞操帯ではなく、自らへの戒めとして女性から女性に贈られるものである。嫁入り道具は少なく、身の回りのものを自分の肩に背負い、案内の人物とたった二人で花婿の村まで歩いていく。

 花婿の村の歓迎は手厚い。部落総出で迎え、花婿の母は花嫁を抱いて言う。「相共に、死につつ、死につつ、生きん」

結婚式、花婿が御飯をもり、それを二人が半分ずつ食べる。それだけである。そして二人が寝室に引き下がったあと、歌い踊る老若男女のアイヌたち。この映画の爽やかさは、アイヌの文化を主体的に継承しようというヒロインの潔い決意に強く支えられている。--------民族映像研究所配付の資料参照