安積遊歩さんの語り(質疑応答)
 NPO法人エスタスカーサ(交流スペース) 2007年7月12日
参加者のみなさん 印)
安積遊歩さんブルーバック
(会場にマイク)
自分が思っていることが正しいか、正しくないか迷うとき、どう判断していけばよいのでしょうか?

素晴らしい質問だと思います。例えば、障害を持つ私がバスに乗りたいということは私にとって100%正しいですよね。でもバスの運転手が危ないから乗せられないというのは運転手にとって100%正しいかもしれない。ですから正しいか正しくないかと事の前に「私にとって」をつけてください。私にとって正しいのか、気持ちのいいことなのか、必要なことなのか、と。気をつけなくてはいけないことは確実に相手を傷つけようと思って言うことは、言わない方がいいですよ。傷つけたくはないけれど、もしかしたら傷つけるかもしれない。それでも私にとって正しく、また相手が傷ついたよと示してくれれば、人間にはすごい力があるのです。謝ることができるということです。ごめんなさい、ただ私はあなたと親しくなりたい、近づきたい、あなたのことが分かりたいのです、と言って下さい。傷つけようという意図の言葉以外に、あなたがどうしても言いたいという言葉があるのなら、その時点でそれはあなたにとって正しいことなのです。もちろん聞いてもらえないこともたくさんありますが、その次はどうしたら聞いてもらえるのか、ということです。バス闘争のようにバス前に寝転がってまで聞いてもらう必要のあることなのか、それは考えてくださいね。

実は結婚するのですが
おめでとう!
介護の仕事をやめて結婚することがいいことか悪いことか迷っていましたので。
でも結婚したいと思っていらっしゃるなら、それは正しいことですよ。結婚だって、ちゃんと離婚があります。(爆笑)この結婚は失敗だと思えば離婚すればいいのです。人生は様々な可能性に満ちていますから。正しいと思うことをやってくださいね。
涙が先に出てしまうのですが、心の中に身体の中に染み込んだ言葉に、今すぐに答えはでません。家に帰ってから染み出してくると思います。 ありがとう
今日は介護の仕事の中でお話をきけて嬉しかったです。安積さんのバイタリティーとお話している間の笑顔が染み込んでくるようでした。自分を振り返ってみると、後々のことを考えて自分の意見を言うということがなかなかできないのです。でも人間関係を円滑にするためにはまず自分の意見を主張することが第一歩なのだなと感じました。今聞いてくださっている安積さんのお顔、とても素敵だと思います。 ありがとう
安積さんには以前お世話になりました。安積さんはご自分の環境や身体から学んだことを、使命を持って伝えていらっしゃる。それにひきかえ私は何もなく年を重ねているなと思っています。何かひとつ最後にやれたらと今日は感じています。 ありがとう
(筆談で)今日はよかったです。あいかわらずとっても元気なので、私もその元気をもらおうと思いました。今日はどうもありがとう。 いつも通信ありがとうね。読んでるよ。
私はカナダ人と結婚していて、子供がいわゆるハーフなのです。好意で言ってくださっていると思うのですが「ハーフですか?」とよく聞かれます。それは私にとっては人種差別なのです。今までは笑顔で流してきました。ありがとうって思わなくてはいけないのかな、と。しかしお話を聞いていたら、いくら好意で言ってくれたとしても、私が感じる感じ方を相手に伝えなければ差別はなくなっていかないのかなと思っています。
こっちに来ませんか?(手をにぎって)泣きながら話すという約束をお互いにするということは大事です。泣かなくてはいけないほどに、ほんとに今までためていたんだね。私の大事な子供たちをかわいいと思ってくれるのはすごく嬉しいけれど・・・・?
みかけではなく、一人の人間として、本質をみていただきたいのです。みなさんもみかけで判断されたくないと思います。やはり私たちの子供もそうなのです。デパートに行っても、必ず私の顔をみて子供の顔を見るお母さんがたくさんいらっしゃって気になります。
どういうふうに近づいてもらいたい?
日本人にはわからない海外の方との交流があります。家族を作ることで世界を近づけている、そのような見方をしていただきたい。人間同士なのでやはり話し合うことで分かり合えると思います。
ではなんて声をかければいいかな。「素敵なご家族ですね。友達になりたいです」(頷く)お子さんのことも、ハーフっていう言い方は、何か半分みたいですよね。二つの国籍を持っているのだから、ダブルやバイというか。呼び方に関しては当事者の方が、こう呼んでほしいという言葉をきいてくださいね。そして外見だけみて「ハーフだね」なんていわないでください。どうもありがとう。
安積さんが妊娠中にお話をきかせていただいたことがあります。そのお子さんが大きくなられたのだなぁ、と思いました。言葉にできないパワーというか、もっと自由にやっていいんだよ、というメッセージがビシビシ伝わってきました。ありがとうございます。 ありがとう
今日は「障害」中心のお話かと思っていましたが、意外なことに子育ての話があり、二歳の子供がいる私には考えさせられることも多かったです。とてもよかったです。自分の思ったことを素直に表現するということですが、子供を自由にしてあげることと、自分の気持ちがよくぶつかってしまいます。  そうですね。子供に対して大人が言いたいことを言うのは、できればやめましょう。できるだけ、ベストをつくして。

 なぜなら大人が100万倍も有利な立場にいるからです。言葉も駆使できます。歳の差もあります。「何で言ってることわからないの!」と叱っても分からないのは当たり前です。子供はお互いを大事にしあいたいとか、自分は愛されて生まれてきたといった大切なことは全て知っています。それを言葉で組み立てていくということはできない。それを大人が丁寧に関わりを通して教育していきます。でも子供が持っている自己尊厳意識や自己信頼感をつぶしてまで、それを伝えるのは難しいです。小さな子供に言葉で言い募ることは、なるべく避けてよく聞いてあげてください。100言いいたいときは10言ぐらいにしてよく聞いてください。聞けないときは見てあげてください。見てもらっていると安心してワーッと泣きますから。お母さんを本当に信頼している自己表現の涙ですから。涙や表現やしぐさの数々を大人が聞けるようになってほしいのです。言葉で伝え合ってほしいのは大人同士の関係です。私はカウンセラーをしていますが、この世の中で最高のカウンセラーは小さな子だと思うよ。どんな目にあっても、お母さんを裏切ることなく、ずっとお母さんを好きでいてくれる。最高のカウンセラーたちです。いつも完璧である必要はありません。とにかくいいお母さんだな、と自分をほめながらベストを尽くして聞いてあげてほしいのです。子供はお母さんがそれを嫌がっているというようなことはよく分かっていますので、注目がほしいときは余計やるかもしれません。子供にぶつけたくなったらトイレに駆け込んで「バカー」と叫んでいいから。(笑)でも絶対子供にぶつけないでね。子供には本当のことだけ伝えてください。あなたが生まれてどんなに嬉しいか、どんなに愛しているか。

 なぜ子供に怒りたくなるのかというと、私たち自身があまりにも聞いてもらえなかった「小さな頃の私たち」が怒りたくなるのです。親として子供をただ怒りたい人はいないでしょう。もちろんこの瞬間トラックにはねられそうだという時は大声だしてください。そのような時以外に、合理的な怒りなんてそうありません。これは自分に対しても言っています。(笑)娘には怒らないんですよ。むしろ私が怒られます。でもパートナーに対しては怒りが出てしまうので気をつけようと思います。やはり怒ってものが伝わるかというとなかなかそうはいきませんので、怒りたい気持ちはトイレに流して、仲間同士で聞きあってくださいね。ここでマムズ・カフェってやっているのよね?子供に外で遊んでもらって、親同士で聞き合えるといいと思います。

私が人と違うところは国籍です。外見ではわからないのですが、話してみてそれがわかるようです。違うということが、時には誇りになるときもあります。
そのとおりです
今日、私の力になった言葉は「人になんて思われてもいい。差別を恐れず人と付き合おう」です
はじめは何でもいいよね。差別でもいいから近づいてほしいよね。どちらから、いらしたの?
中国です。さきほどカナダの方のお話がありました。私の中にも差別があるのですが、カナダ人とのハーフって素敵だな、かわいいなと思っていました。一般的な見方でいうと中国は貧乏な国というような・・・私の中にも差別があるんです。それをどうやって乗り越えたらいいでしょうか?
すごく知的な質問ですね。それはほんとうに大事なことです。外からの差別ではなく、内からくる差別、内面化された抑圧からくる悲しみをいっぱい聞きあって仲間になっていくことが大事ですね。お互いを否定しないという約束のもとに、自分の中にある自分への否定をたくさん聞いてもらい、でもあなたはとても素敵な人だという言葉とまなざしを受けることです。あなたは本当にベストを尽くして生きてきたね、と言ってもらえるといいよね。
(70代男性)いいお話を、生まれて初めて聞きました。差別のこと、普通は考えていませんね。でもこうやって直接お会いしてお話をきくと、本当に心の底から理解することができました。非常に感謝しています。 ありがとうございます
聞いていて、涙がでてきて。いつも言えない自分がいて・・。
いいお母さんだ。お子さんが「大好きだよ、お母さん」ってみているよ
言いたいのですが、こうしてすぐ涙がでてきて。こうしなければいけないと決めてしまって、できないと、涙が・・。
いっぱい泣いていいということだよ。きっと、よくやっているよ。
私の弟も視覚に障害があるのです。家族の中に障害を持つ人がいるということ。なんでもしてあげたいと思うのですが、私は健常者だから・・でもしてあげたいと思うことが一番だと・・
ありがとう。そしてできるベストのことをあなたはしてきてくれたと思います。
私は下の名前がアサカなのです。私にも息子と娘がいます。人と繋がりあいたいという気持ちは、すごくシンプルで分かりやすいです。しかし私が住んでいる町には不審者情報があふれています。私もこの人危ない人かなと身構えることがありますが、子供たちに自分を守るように教えることは、すごく寂しいことだと思うのです。どういう風に子供たちに伝えればいいのか考えています。 東京都では小学生にも不審者対策として携帯電話を持たせようという動きがあります。イギリスでは16歳以下の子供が携帯電話を持つことを禁じています。それは電磁波の問題です。昔は、車椅子に乗っていると、昔の子供はすぐ寄ってきて「なんでそんなものに乗っているの?」と素直に聞いていました。「おばちゃん、宇宙から来たのよ!」と答えるのが楽しみだったのに、今は不審者対策で聞いてもくれません。人と繋がるという大事なことを伝えていきたいと思います。
心に残ったこと、いくつもあるのですが、最初にお話してくださったお母様のことが一番印象深かったです。泣きたいときに好きなだけ泣かせてくれたというお話。私が小さな頃は「泣いてはいけない。親を悲しませてはいけない」と思い、泣くのを我慢してきました。でも自分だけではおさまらないのですね。自分の子供が泣くと「我慢しなさい」と思ってしまうのは、抑圧が連鎖しているというか。もちろん母親は私を苦しめようとしてそうしたわけではありません。でも妊娠している子供のためにもそれに気づけた自分がいたことが今日は嬉しく、いい機会を与えていただいたと思っています。 すてきな親子関係を始められていらっしゃいますね。おめでとう。
にこやかに、つらい深いお話をされることに驚きました。今日はどんなお話をされるか楽しみに参りました。予想通りたくさんの宿題をいただきました。ゆっくり一人になってもう一度考えてみます。ひとつお聞きしたいことは、最初に大人と戦うときに仲間たちがいないとだめなんだとおっしゃいました。それは少しこびることになるのではと感じましたが、お話がすすむにつれて「分かち合う」関係と環境を作ろうということになり、私もまさにそのとおりだと感じます。しかし大人になった今、味方をつくろうという感覚は少し幼いような気がするのですが、いかがでしょうか?幼い頃のひとつの戦略だったのですか?
 今でもお互いがお互いを味方だと思う感覚は大事だと思っています。戦争をする人々は、本当の意味で味方を自分の中に感じていないのです。恐くて恐くて相手を叩きのめさなくてはいけないと絶えず思っています。味方になりあうとお互いが決めるというか。今、若い人たちに対して簡単に精神安定剤や睡眠薬のようなものを処方されています。私はお薬などの中毒物質に頼らない社会を作りたいのです。もし味方になりあえたなら、薬害だけでなく人を傷つけ殺しあわずにすみます。薬は本質的な解決ではないのです。
 今、私の家に居る20代の方も一回に8錠も飲んでいます。お薬を止めると不安だというのです。不安だったり、つらかったりしてはいけないというメッセージ、それをやめてほしいんだよね。生きるということは不安だったりつらかったりすること。でも生きていくんです。不安だったり悲しかったりつらかったりを見せない関係の中で、がんばって、がんばって一人でやっていかなくてはいけないのだ、となったら、あまりにつらくて薬に手を出したくもなりますよね。「味方をつくりあう。わかちあう」子供にとっても大事だけれど、大人の戦略だと思っています。飢餓の問題だって分かち合えば解決するはずですから。
本も拝読していましたが、今日は素敵なお話お聞きして嬉しく思っています。ベストを尽くして生きてきたね、と言ってあげられる人になりたいです。ありがとうございました。 ありがとう
子供の世話で途切れ途切れで申し訳ないです。ありがとうございます ありがとう
不安と苦しみを味わっていい、そこから逃げようとするからドツボに入っていくということが実感として今あります。祖母が亡くなり看病をしていた母も倒れてしまいました。姉は睡眠薬やお酒がないと眠れないという状態ですが、励ましあっています。母の病気のおかげで、ほんとうに姉妹が出会えたような気がします。 お姉さんと、手をとりあって泣いてください。悲しいって感じていいんですよ。
私は3人目の出産で、やっと納得のいく自然出産ができました。安積さんがリスクを持ちながら出産されたお話をもう少しうかがいたかったです。 私は帝王切開でした。お医者さんといい出会いをし、人間を信じなおせました。素晴らしい体験でしたよ。ありがとう。
泣きたいときには泣いていいんだよ、というお話をきいて・・・
いいんだよ、いっぱい泣いて
子供が生まれてずっとがんばってきたから・・・
泣きながらがんばっていいからね。泣く能力を使わなくては人間じゃないと思うよ。
私はインドネシア人と結婚しています。アジア系なので子供がハーフですがほとんど言われない。たまに言われると嬉しくなるくらいです。結婚して13年たちますが、あまり何も気にせず生活してきました。在日韓国人差別の講演を聴いて、その時私も対象者であることにようやく自覚したくらいです。インドネシアという国もあまり知られてなくて「ガンジス川に死体が流れているんですよね」と聞かれて「それはインドです」と答えたり。(笑)私には何もないと思っているので、そういうことで話しかけてもらえると嬉しいのです。 そうだね。一人一人感じ方は違うよね
子供をみていてなかなかお話きけなかったのですが、みなさんの感想を聞きながら涙がでています。私は子供が生まれて7日目に母をなくしました。安積さんの著書を拝読したのですが、まさに私が子供に伝えたいことでした。その中で妹さんのことを書いた部分が印象的でした。この場に居られてよかったです。いつか娘にも今日のお話を伝えていきます。 ありがとう
今日はありがとうございます。何気なくお店で手にしたカタログのお写真の雰囲気が素敵でお邪魔しました。この子がアレルギーで、一時期顔がひどい状態になったことがあって・・・。
泣いていいですよ
人からいろいろ言われても、何も言い返せないことがあって。安積さんのお話をきいて、この子を守れるのは私しかいない、言うべきことは表現していかなくてはと勉強させていただきました。安積さんが51歳と聞き驚きました。私も50代になったら安積さんのような素敵な笑顔の女性になりたいです。 ありがとう
ほんとにきてよかったと、心が熱くなっています。私も我慢して生きてきた方です。またマイナスの言葉を使ってはいけないと思ってきました。でも今日、全ての感情に価値があるということをヒシヒシと感じ感動しています。 ありがとう
今日は温かいお話ありがとうございます。子供に優しく接してあげたい、そんな明るい気持ちになりました。 ありがとう
本を持ってきたので読んでください。いい本です(笑)「癒しのセクシートリップ」これは35歳で大失恋したときで書きました。もう次の恋愛はないだろうと、それまでのセクシャルな体験も赤裸々にかきました。障害をもつ女性たち、すべての女性たちのために清水の舞台から飛び降りるような気持ちで決意して書いた本です。すると世の中には不思議な人もいるもので、ラブレターが3通来ました。その中から選んだ男性が今の旦那です(笑)人生は言いたいことは言ったほうがいい。(笑)講演会に聞きにきてくれた彼に、すぐ介助者になってもらいお付き合いが始まりました。

 私は文部大臣になっても、子供だけは産まないと思っていましたが妊娠したんですね。子育てする3人の家族の物語として「車椅子からの宣戦布告」を書きました。「ねぇ、自分のことを好きになろうよ」は10代の人たちのために書いた本です。本の収益はフィリピンの障害児支援のために寄付されます。
最後に私をサポートしてくれている金井美里さんから一言。彼女は最高の介助者であり、6人の子供のベストな味方として活躍してくれています。

(金井美里さん)子供たちはたくさん笑って泣いて遊べば、勝手に元気になっていってくれます。お母さんたちが安心して子供たちを見守っていられる場があればいいですよね。
大事な大事な未来を若い人たちに渡していきたいと思います。一番忍耐強く待っていてくれた若い人たちにありがとう!
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