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九州大学芸術工学研究院 知足院美加子

「現代思想」2 特集身体障害者(障害者運動から見えてくるもの)1998 vol.26-2  青土社

----(抜粋)「瞬間のかたち」劇団「態変」の軌跡 金満里

「障害者自身のもっているいちばん凄いもの、それが言葉として伝えられるかどうかということではなくてね、やっぱり存在そのものっていうのをどういうふうにやるんか」

「健常者の勝手な、生み出してきた価値観の行き詰まり解消としての解釈でしかないということです。...それは根本的に私達が「生きている」という実態にはせまれないだろうということは見え見えですよね。だけどそこを避けて通るのではなく、敢えて引き受けて自分のものをぶつけて創る側にならなければならないということなんです。」

「きれいとか汚いとか、正しいとか正しくないとか、そういうことも、どうでもいいというかぶっ飛ぶようなね、そういう地平の見方っていうの。...人間として持たされてしまっている固定観念ですよ、自然にそんなもの普通なのか?っていうような感覚。人間が支配されている感覚の中で優性意識っていうのは一番大きいですよね。私のなかには全然ないんですよ。個の視点から発想して立った場合、そんなもの関係ないんです。」

「お互い生かし合いっていうのがベタベタにならないで、それでいて食い合いしないと面白くない」


ーー(抜粋)森岡祥林 InterCommunication33 p106,2000年

 20世紀後半の芸術の動向は、芸術の自立性に執着する多幸病の病である。芸術自身の存在根拠を保障する社会的な諸制度を見つめ直し、作者・作品・観客(批評)という伝統的な三位一体の関係が“健全に”反省されるようになったのは、つい最近のことであると言ってよい。芸術のリハビリテーションは始まったばかりである。...障害とは先天的であれ後天的であれ個人が抱え込む固有の病的・機能的負荷ではなく、個人の生活世界を含む社会環境自体が個人の参加性の度合いを規定する、その尺度にすぎない。平たく言えば、環境が障害をつくり障害を解消するというのである。....芸術の輪郭は社会空間に穿つ美学的な特異点の強度を表象するにすぎない。芸術は社会環境によってつくられるのだ。...障害という概念を下敷きに考え直してみると、芸術の明日は意外に生き生きしている。


(森岡氏が選んだ10冊)

「光の中へー視覚障害者の美術館・博物館アクセス」

 ジュリア・カセム, 小学館 1998

「異常児とその作品ー逞しき成長」

 森建造/石田博英, 新紀元社 1943

「美術による人間形成」

 V.ローウエンフェルド(竹内清 堀内敏 武井勝雄 訳), 黎明書房 1963

「ルドルフ・シュタイナー教育講座教育芸術ー方法論と教授法」

 ルドルフ・シュタイナー(高橋巌 訳), 筑摩書房 1989

「Psychopathological Notebook」

Karel Appel  Varlag /Gachnang&Springer, BernAIBerlin,1999

「パラレル・ヴィジョンー20世紀美術とアウトサイダー・アート」

 モーリス・タックマン/キャロル・S・エリル編, 淡交社 1993

「見たことないもん作られへん」

 福来四朗, 講談社 1969

「手で見るかたち」

 西村陽平, 白水社 1995

「Outsider Art : Boundaries in Contemporary Culture」

 Vera L.Zolberg and Joni maya Cherbo(eds.) Cambridge Cultural Social Studies, Cambridge University Press,1998

「Museums without Barriers:A New Deal for Disabled People」

 Fondation de France &ICOM Routledge,1991