「野花と音を歩く」 

佐賀県佐賀市三瀬村井出野栗園

 

 2017年4月15日(土)、佐賀県の三瀬村「井出野観光栗園」にて、アートワークショップを行いました。この栗園は地域の方々が30年近い年月をかけて、剪定や下草刈りを行い、 大切に守ってきた場所です。栗園というと「栗拾い」の 秋のイメージですが、「景観そのものの美しさ」「季節ごとの自然の変化」もとても魅力的です。その美しさは一朝一夕に生まれたものでなく、地域の方々の手間と愛情によって生まれています。本プロジェクトは、その場で起こっている繊細かつたゆまない自然と人の営みを、参加者に深く感じ取ってもらうために企画されたものです。具体的なプログラムは以下の通りです。

(1)栗園内で、ウインドチャイムを制作する。(2)野花を探し、気に入った野花の近くにチャイムを設置する。(3)野花図鑑やチャイムの音をたよりに自由に散策する。(4)園内に設置されているフォグスクリーンによる映像を鑑賞する。栗園の管理者の一人である庄島さんの作業風景が霧の中に投影される。(5)ハーブティーの「闘茶会」を行う。名前をふせた5つのお茶を飲み比べ、茶名をあてる。←このうち二つは朝廣先生の手作り。

 野花の研究をしている朝廣研究室の垣迫さん、映像の研究をしている知足研究室の宇野君が準備のために何度も現地に足を運びました。庄島さん(農業家、井出野栗園管理)や小野寺さん(旅をする木)など地元の方々にも協力していただきました。闘茶会では、お二人のご家族が働く井手野加工所の美味しい和菓子が配布され、みんな大喜びでした。本当にありがとうございました。

 このワークショップは「場」を味わう手段として、「よく聞くこと」、「注意深くみること」、「歩くこと(足裏の感触を含めて)」、「違いを知ろうとして味わうこと」など、五感を通じて深く感じることを大切にしています。体全体を通じて得た情報は、私たちの認識と行動に影響を与えます。それらの体験が美しさに寄り添うなら、より強く影響されるのです。これが、アートのもつ力のひとつです。今回栗園を散策しながら、人間が「美しい」と感じるものは、生きのびられる方向を、自然が遠くから指し示しているのだと感じました。 (文責)知足

→「野花と音を歩く」チラシPDF
→ウインドチャイム作り方PDF
主催団体:九州大学芸術工学研究院 朝廣研究室、知足研究室
協力:井出野栗組合、「旅をする木」小野寺むつみ、九州大学ソーシャルアートラボ
 
ブルーシートの上で、ウインドチャイム作りのワークショップです。アルミパイプ、栗の木などは切断し、穴あけ、バリとりをしています。レーザーカッターでアクリル板を加工し、土台を作っています(準備が手間でした)。参加者の約半数が留学生だったので中村先生が通訳を引き受けてくださいました。
釣り糸と結束バンドで、パーツをつないでいきます。つなぎ目の補強に接着剤を入れます。単純な作業なのですが、中空に保持しながら作業するのが、意外と大変です。中心の栗の木が風を受けると、中のアクリル板がパイプを叩き、音がなります。本ページ上部の映像で、庄司さんのチャイムの音がきこえます。
左が垣迫さんが作った「井出野観光栗園野花図鑑」、右が宇野君が作った庄島さんの紹介文と作品コンセプト。各自に携行していただきました。
図鑑とチャイムを持って散策中です。垣迫さんの図鑑によって、花たちは名を与えられていました。人の動きにともなって、チャイムの音が栗園中に広がりました。 目を閉じると、音によって栗園にいる人の「存在」が心に感じられました。
じっくりと、小さな花を探しています。参加者の方々から「野花は美しい。でも花だけでなく木々も美しい」「知るとみえてくる、ということに気づいた」という感想をいただきました。
 
座って動かない参加者がいたので心配して近づくと、腕にかわいいアマガエルが乗っていました。動かすのがかわいそうなので、じっとしていたそうです。
画面ではわかりにくいですがフォグ(霧)スクリーンに庄島さんの作業風景が映っています。 静音を心がけていたのでプロジェクターは充電式のものを使っています。また霧は、ドライアイスを使っています。裏でお湯をわかしながら霧を発生させるという、地道な宇野君の作業が続きます。
庄司さんと小野寺さんのご家族が働く井出野加工所のおまんじゅうとよもぎ団子を差し入れしていただきました。ものすごく美味しかったです。フランスからの留学生がこの和菓子をとても気に入って、遠慮がちにおかわりしていました。
小野寺さんが学生の研究(垣迫さん、宇野君)について、心からの賛辞をおくってくださいました。ありがとうございました。「この試みは、これからの生きやすい地域づくりのヒントを含んでいると思います。」という感想をいただきました。みなさん、本当にありがとうございました。

 

Homealbumexplain・mail)  九州大学芸術工学研究院 知足美加子