プロジェクト概要
■目的
運動錯視の研究を通じて、視覚情報処理過程における共通の特性、メカニズムを解明し、オップアート等の画像表現との関わりを明らかにする
■対象とする錯視:
●追従眼球運動追従錯視(Pursuit-Pursuing illusion)


左図の図形は放射状のパタンの中央に置かれた黄色い円盤であるが、周辺視で見ながら目が何かを追いかけると、同じ方向に円盤が動いて見える錯視である。右の図は、目が中央の+を凝視しているときに、紙の方を回転させている図である。時計回りに紙を回すと、円盤は紙といっしょに回って見えずに、その場に静止したり反時計回りに回転して見えたりする。Ito(2010)によってEuropean Conference on Visual Perceptionで発表された。
●エニグマ(Enigma)錯視

上図はIsia Leviantの「Enigma」を簡略化したものである。中央の点を凝視していると、灰色のリングの中を何かがちらついたり回ったりしているのが見える。この錯視と追従眼球運動追従錯視とは、動く場所の両側がコトントラストの高い縞になっているという共通点がある。微細な眼球運動が原因とする説がある。
●サッカードによる運動錯視(saccadic motion enhancement)
上図は2色からなるパタンである。やや薄暗い部屋でこのような画像を見る際、2色が等輝度に近いと、サッカードと逆方向にパタンが動いて見える。Ito(2005)によってEuropean Conference on Eye Movementで国外に発表された。
■研究成果(2012年4月現在):
●論文
Ito, H. (2012) Illusory object motion in the centre of a radial pattern: the PursuitPursuing illusion.
i-Perception, 3(1), 59-87.
伊藤, 富松, 柏(under revision) 追従眼球運動追従錯視とEnigma錯視の共通性, 心理学評論
Bai, Y. and Ito, H. (preparing) Effect of background texture on the Pursuit-Pursuing illusion.
Tomimatsu, E, and Ito, H. (preparing) Relative-motion-detection hypothesis for the Enigma illusion.
●学会発表
Bai, Y. and Ito, H. (2011) Illusory object motion on stripes. Asia-Pacific Conference on Vision, Hong Kong.
柏, 伊藤(2011) 縞パタンによる運動錯視. 日本視覚学会2011年夏季大会
富松, 伊藤(2011) エニグマ錯視に対する物理的回転の影響. 日本視覚学会2011年夏季大会
柏, 伊藤(2012) 追従眼球運動追従錯視における背景テクスチャの効果. 日本視覚学会2012年冬期大会
富松, 伊藤(2012) エニグマ錯視における相対運動順応の検討. 日本視覚学会2012年冬期大会
連絡先: 伊藤裕之(itoアットマークdesign.kyushu-u.ac.jp)