現代アートとしてのアウトサイダ−・巡回展  >HOME

>芸術とヘルスケアフォーラム

知的障害者訓練施設 工房しょうぶ(鹿児島)陶芸、木工、染色、和紙工芸、布工芸、パンの工房を持つ施設。1985年より活動開始。入園生70人(寮生活)と在宅のデイサービスに通ってくる園生。その作品展が東京、京都、福岡、鹿児島で開かれた。


<展覧会の感想> 私は鹿児島の展覧会にでかけた。特に刺繍に驚いた。無作為の作為でありながら、パワーが伝わってくる。徹底して刺された糸は、半立体になっていたり、ためらいがちに途切れてしまう。毎日作業員に送りつづけられるある園生の手紙の展示も印象に残った。彼独特の形式の乗っ取ってかかれた大量の手紙の展示。それらの作品をエイブル(可能性の)アートではなく、工房があえてアウトサイダーアートとよぶのはなぜか
 それは工房菖蒲の職員(福森さん)によると、
健常者とスタンスがちがうということみつめ、そこから始めていくという感覚なのだそうだ。

出発点は「できない(訓練)」でなく、「できる」であること。
・彼らの作品は「可能性」があるというのでなく、彼らにとっては思い通りの作品であるということ。
・行為の重さそのものをアートとしてとらえ、いかしていく。
・活動の結果生まれた作品は、最終的な結果でなく、
その人の暮らしそのものが潤うこと(周りのひとや障害者)に役立つ。だから売るということをしっかり考えることで、援助手段のひとつとして「ものつくり」を位置付ける。



 以上は福森さんのお話と、彼が書いた季刊「しょうぶ」2000冬号を参考にした。
彼の姿勢に、ごまかさない公平さを感じた。まなざしを向ける側の、知覚の変容をせまる展覧会。工房しょうぶには、地に足がついた強さ、新しさがあると私は思った。

工房しょうぶ (住所)892-0871鹿児島市吉野町5066 (tel/fax)099-243-6639