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講演会「未来につづく道」
第1回 田中 優 氏  未来バンク事業組合理事長
「環境破壊・温暖化を引き起こす社会システム」
大地、生命、農業と芸術の融合による教育プログラム
(九州大学現代GPの一環として)現代GPホームページ

→テープ起こし 講演会案内 →アンケート →ちらし(表) (裏)

田中優講演会に参加して 

(九州大学芸術工学研究院 知足美加子)

 本講演は参加者の実感に訴える鋭さを持ち、クリエイティビティあふれる優れた社会デザインを示した。

 まず田中優氏は温暖化社会と、資源をめぐる国家的利己主義と戦争・世界貧困との相関を暴いた。またポジティブ・フィードバックやピーク・オイル問題が顕在化するのは間近であることを言及。観念的な言説は極力用いずに、詳細なデータ調査によって問題の「原因」を明示し、温暖化防止の糸口を具体的に提示した。

 例えば京都議定書の二酸化炭素排出量削減目標は、企業が使う電気料金の仕組みを変更すること、または発電所の稼働効率にトップランナー方式を加えることだけで達成できることなどを指摘した。また家庭における二酸化炭素削減については省エネを優先することを強調し、田中優氏発案のユニークな活動(市民主体の融資、森林保全に繋がる住宅作り)など新しい社会の仕組み方が次々と紹介された。

 さらに「国境を越える燃料に税金がかからない」ことがグローバリゼーションを加速し、運輸に伴う二酸化炭素排出を増加させている事実を示した。よって「地産地消」は温暖化防止の切り札である。

 社会へのアプローチは、縦(政治との関係)と横(広く周知する)が従来のものだが、もうひとつは斜め(オルタナティブな方法を提示し実行する)という方向がある。最後に田中氏は以下のように学生に語った。「生活の中に"資産"を増やし、組織や金銭に依存しない生き方は可能である。資産とは所有して利益を増やすものである。自分の能力を高め多様な収入源を確保すること。さらに支出を減らすものも資産であり、省エネや自然エネルギーの自給などもこれに含まれる。自分なりのアウトプットを見つけ、多くの人々に自分の思いを届けてほしい。」高い知見による卓越したプレゼンテーションに、参加者の集中は始終途切れることがなかった。

2008年5月30日

*講演会の記録は、3回分の講演会を合わせて報告書として作成する予定

5月30日18:30〜

田中 優(たなか ゆう)

1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」 理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「中間法人 天然住宅」副代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院、大東文化大学の非常勤講師。  著書(共著含む)に『環境破壊のメカニズム』『日本の電気料はなぜ高い』『どうして郵貯がいけないの』(以上、北斗出版)、『非戦』(幻冬社)、『Eco・エコ省エネゲーム』『戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方』『戦争をしなくてすむ30の方法』『世界の貧しさをなくす30の方法』(以上、合同出版)、『戦争って、環境問題と関係ないと思ってた』(岩波書店)『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』(扶桑社新書)『おカネで世界を変える30の方法』(合同出版)『今すぐ考えよう地球温暖化!1〜3』(岩崎書店、子ども向け)

 

九州大学は、地域の人々と関わり風土を慈しむ心を養う学生教育プログラムを始めました。自分が生きる土地のものを食べる「地産地消」は、単に健康のためだけではありません。温暖化や世界貧困などの社会問題に深く関わっているのです。「地産地消」につながる世界的社会問題や文化的背景について学び、未来につづく道を共に探しましょう。

現代GP(Good Practice)とは、優れた大学教育プログラムを支援する制度です。九州大学・現代GP「地域環境、農業活用による大学教育の活性化(大地、生命、農業と芸術の融合による教育プログラム)」の一環として3回の講演会を行うことになりました。次世代のために、心を見失った物質中心の社会システムを改善し持続可能な社会を取り戻さなければなりません。そのためにはまず温暖化や世界貧困を生み出す社会のあり方に目を向け、それらが私たちの「食」や「地産地消の農業生産」に結びついていることに気づく必要があります。受講者自身が問題を主体的に考え、創造性豊かな提案と行動する力を養うことを目標にしています。大学生と、地域の方々が共に学ぶ新しいプログラムです。

→参考:未来につづく道「橘の響き」「命の根」

九州大学大学院芸術工学研究院 知足(ともたり)美加子

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