自動車産業は「100年に一度の大変革期」と言われています。当然ですが、車が変われば、音のデザインも、変わります!2016年にダイムラー社が示した中長期戦略CASE(コネクテッドConnectivity,自動運転Autonomous,シェアリングShared & service,電動化Electric)は,その変革の要点を的確に捉えたものです。電動化や自動化によって、走行音に求められる音デザインは変わるでしょう。

シェアリングの一般化など、自動車の所有や利用の仕方が変わると、ユーザーごと、利用場面ごとにカスタマイズした音デザインへの欲求はより高まるでしょう。一方で、自動運転の技術普及によって、速度や操舵の制御が自動化され、危険を自動回避する機能が一般化すれば、運転中に聴取すべき音の要求も変わってくるでしょう。

車外の音のデザイン

電動自動車の普及によって道路交通騒音の低減が期待される一方で、歩行者にとっては車両の接近に気づきにくくなるという問題が懸念されています。そこで、音によって歩行者に車両の接近を知らせる装置(接近通報装置、AVAS)から発せられる音の利用が進んでいます。

接近通報音とは、電気モータのみで走行可能な自動車に設置され,歩行者等に車両の接近を知らせるための装置(車両接近通報装置,Acoustic Vehicle Alerting System: 以下AVAS)から発せられる音のことである。環境騒音に対してマスキングされず十分な検知性を発揮するよう、国連規則では1/3オクターブバンド毎の最低音量が規定されている。

実は、山内は、このAVASに関する国連規則 (UN-R138) の制定に作業部会委員として参加していました。本研究室は,おそらく世界でも指折りのAVAS研究拠点です。

車内の音のデザイン

電動化によって駆動系が静音化すると、車内音環境も大きく変わります。さらに他方3つの要素(コネクテッド、自動運転、共有利用サービス)は、自動車の価値や社会的意味を大きく変えるでしょう。その中で、自動車内の音環境はどのように変容していくでしょうか?

自動運転や他車との協調運転の技術普及によって衝突の危険性が軽減していけば、制動機構に求められる性能も変わってきます。タイヤや路面舗装に要求される制動性能が緩和され、音響性能の向上(低騒音化や音質改善)に割り当てられるリソースが増 加する可能性もあります。いままでコスト面で虐げ られてきた低騒音技術が、やっと日の目を見るかもしれません。自動運転などによって不要な加減速や 渋滞が抑制され、道路交通騒音が低減される可能性も期待されます。

自動運転の技術がどれだけ進展しても、自動車が人を運ぶ仕組みである限りは人とシステムの接合面は必ず存在します。そして、システムが複雑化するほどに、情報は増加し複雑化します。そのための適切なインターフェースデザインが求められま​​す。その 中では、高齢者の知覚特性、特に高齢難聴の傾向 を考慮したデザインも求められ、当然、音のデザインも重要になってくるでしょう。

電動車内音環境のデザイン(空調音質評価,車内HMIなど) 
電動自動車の走行音デザイン

共同研究者 Massimiliano Masullo

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