道路交通騒音は、我々の生活に身近な騒音で、都市部の都市の音環境を形成する大きな要因です。その性質は、走行する車両の性質や、交通の程度によって大きく異なり、また時間的にも大きく不規則に変動するものです。
電動自動車走行音の音響パワーレベルLWAに関する研究
近年急速に普及している電動自動車(EV、ハイブリッド自動車、水素電池自動車など)は、走行音が静かで、環境騒音の低減効果が期待されます。その騒音低減効果を定量的に評価するためには、自動車単体から発生する騒音の程度、つまり音響パワーレベル(LWA)を正確に把握することが必要です。
本研究室では、電動自動車の音響パワーレベルの速度依存性や周波数特性を、試験車による実測データの蓄積によって集約する研究などに取り組んでいます。国内外の道路騒音予測モデルの音源式として活用されれば、環境影響評価や環境保全対策(騒音対策)などに活用されることが期待されます。
関連情報
- Katsuya Yamauchi, Moe Yabuno, Ryudai Yamasaki, “Sound power level of electric vehicles running in steady low speed,” Acoust. Sci. & Tech., 41(3), 2020.
- 山内勝也,加藤勇希,吉野丈, 電動自動車の非定常走行状態の音響パワーレベルに関する研究, 日本音響学会 騒音・振動研究会, 2021.06.
ASJ RTN-Model による等価騒音レベル LAeq の予測に精度に関する研究
道路交通騒音の予測や評価において、国内では、日本音響学会 道路交通騒音調査研究委員会で開発されたASJ RTN-Modelが広く用いられています。本研究室では、発表されたモデルによる予測計算値と実測値の対応を検討したり、計算のための仮定や近似が計算結果に及ぼす影響程度の検討などをおこなっています。
道路交通騒音の主観評価に関する研究
道路交通騒音のような、不規則に大きく変動する騒音の評価には、一般に、等価騒音レベル(LAeq,T)という評価量が用いられます。これは、ある時間範囲Tについて、変動する騒音レベルのエネルギー的な平均値として評価するもので、人間の騒音に対する生理的・心理的反応とよく対応することが知られています。しかし,静かな音環境*の中で顕著な騒音(例えば、非常に大きな音を発する車両の通過など)が起こった場合、LAeq,Tの上昇は小さくとも、その印象は大きく変化する場合があります。
(*電動車のさらなる普及などによって実現するかもしれません)
関連情報
- 山内勝也,江副泰亮,森長誠, 高騒音車両の通過によって時間的に大きく変動する道路交通騒音のうるささに関する検討, 自動車技術会春季大会, 2022.05.
- 江副泰亮,山内勝也, 背景騒音レベルから突出した車両通過音が道路交通騒音の印象評価に及ぼす影響, 日本騒音制御工学会 2020年秋季研究発表会, 2020.11.