《鬼杉不動童子》 Onisugi Fudo Doji

 
2022年に英彦山神宮・下津宮に《鬼杉不動》を奉納しました。この不動明王像は、英彦山の国指定天然記念物「鬼杉」(樹齢1200年)の落枝から制作したものです。平成3年の台風19号によって被災した巨大な枝は、不動明王を彫ったものの他にもうひとつありました。その落枝で、不動明王の脇侍である「矜羯羅(こんがら)童子」と「制t迦(せいたか)童子」を彫るべきではないか、と考えるようになりました。しかし残された鬼杉の落枝は、傷みと目割れが多く、厳しい木取りとなりました。小さくなりますが、真木大堂像の不動三尊像を参考にして横に二分割し(協力:杉岡製材所)、鬼杉に何度も問いかけながら制作することとなりました。『聖無動尊一字出生八大童子秘要法品』という中国の偽経では、コンガラ童子とセイタカ童子は以下のように説明されています。

◯矜羯羅(コンガラ)は十五歳の童子のような形で、蓮華の冠をつけ、身体は白い。二つの手は合掌し、その二つの親指と人差し指の間に、一鈷杵(いっこしょ)を横から挿している。天衣や袈裟は繊細で立派に装飾されている。

◯制旺迦(セイタカ)は、また童子の如く、色は紅蓮のようである。頭は五つの髷(まげ)が結われており、一つは頭頂の中心、一つは額の上、二つは頭の左右、一つは頭頂の後にあり、五方五智を表す。左手に金剛杵、右手に金剛棒怒りをもつ悪性の者。ゆえに袈裟をつけず、首まわりの肩に天衣をまとう 。

コンガラ童子とセイタカ童子は「静と動」を表しています。コンガラは優しく従順、セイタカは強く荒々しい性質をもって不動明王をお護りしています。不思議なことですが、鬼杉の杢目がコンガラは穏やかに、セイタカは雉子の羽のように荒く表出し、それぞれの気質とあっていて驚きました。 英彦山の仁王経曼荼羅の童子像、および高千穂秀敏宮司の御孫さんたちをモデルにさせていただきました。まだ台座と持物はできていませんが一旦報告させていただきます。現在英彦山上宮の改修工事が行われており、テンポラリーに運搬用のトロッコが設置されています。台座に関しては、このトロッコの力を借りて山頂部にある千本杉の倒木をおろしていただく予定です(来年後半)。

*2023年11月、童子像の台座の高さについて、実際に仮置きして高千穂有昭禰宜(ねぎ)に相談しました。有昭さんが童子像をみて喜んでくださり、私も嬉しかったです。初めて知ったことですが、有昭さんは毎朝7時の下津宮でのお勤め(お参り)の前に 、山の清水で全身を清める「水垢離(みずこり)」をされているそうです。雪の日はどれほどの冷たさでしょうか。有昭さんの尊い陰徳に手を合わせます。

  (仮置き)不動三尊像 高千穂有昭さん

 

鬼杉落枝上面
鬼杉落枝切断後
 
 
《制t迦(セイタカ)童子(英彦山仁王経曼荼羅部分)》江戸時代
《矜羯羅(コンガラ)童子(英彦山仁王経曼荼羅部分)》江戸時代

鬼杉不動》英彦山下津宮2022年

Homealbumexplain・mail)