英彦山(ひこさん)の実家に北海道犬(テリー)がいる。この犬はアイヌの方々の狩猟犬だったこともあり、ヒグマや鹿などの大型獣に果敢に向かっていく驚くべき勇気の持ち主である。英彦山を散歩中に鹿を見かけると、突然疾風のように駆け出す。対象をみつめる眼は飼いならされた犬などではなく、狼のような野生を感じさせる。これまで数回、鹿を仕留めたことがある犬である。実家の近くにある三日月池に向かう途中、山側に鹿を見かけることが多い。走り出す彼の姿は、地面に足が着かず、跳躍しているようにみえる。本作品は、その緊張した疾走感、躍動感を表現している。
白い犬のイメージはそのままにしたかったので、軽石粉をはたいている(蝋型鋳造の湯道の雰囲気をだそうともしている)。鉄の台座部分は知人からいただいた黒煙を使用した。木の台座は、九州大学箱崎キャンパスで伐採されたヒマラヤ杉を加工したものである。全体を三角形に集約されるような構造にし、跳躍する躍動感を強調している。
|