2017年7月5日に九州北部豪雨災害が起こりました。この木彫《朝倉龍》は、朝倉の流木集積所で出会った樟(くす)の流木を彫ったものです。災害後、流木をたどり、寺内ダム、黒川の共星の里まで足を運びました(→7/26ブログ)。おびただしい土砂と流木、失われた景観、突然とぎれる道路。時間が7月5日のまま途切れてしまったようでした。自然災害のカタストロフはあたりまえの日常を寸断し、被災者はある日突如として「昨日と繋がらない今日」を生きることを強いられます(→九州の防災原稿「復興とアート」)。
流木には沢山の泥と石がかんでいたため、朝倉の杉岡製材所で高圧洗浄機をかけていただきました。大学に材が届いてからは、外で1人コツコツ彫り進めましたが、この冬の寒さには手がかじかみました。
彫っていると、この木が蓄えてきた時間(樹齢132年)の重みや意志のようなものをふと感じる時があります。木からあたたかい気持ちを感じる、と言っても信じてもらえないかもしれませんが、実際そうなのです。木の素朴な素材感を活かすために、細かく工芸的に彫り込みすぎないよう気をつけました。
龍の九似(モデルになった九つの生き物)は以前彫ったことがあるものが多く、架空のものを彫っている感じはありませんでした。龍のヒゲは、英彦山の鹿の角を削り出して作りました。
統廃合後の杷木小学校に寄贈される予定です。これをみた子供達が元気になってくれたら嬉しい、という気持ちだけで作ったものです。これからの朝倉を守ってくれる存在として、子供達に安心を与えてほしいと願います。
*2018年7月5日災害一周年の日に、新設の朝倉市立杷木小学校に本作品を寄贈しました。全校集会を開いてくださり、体育館のステージでお披露目をしました。子供達が彫刻について事前に調べてくれていたり、感謝の気持ちを伝えてくれて、本当に嬉しかったです。小学校の1F玄関に設置されています。→寄贈の様子の紹介ページ