ミソサザイは国内の野鳥のなかでも最小種の一つで、古事記にも登場する由緒ある鳥です。体長約10cm、体重も10g程度(10円玉2枚分くらい)のとても小さな鳥です。
今年の正月、英彦山の実家でミソサザイの亡骸を見つけました。あまりの軽さに、重さを感じるどころか、手の上でフワッと浮いているように思いました。土に埋めてあげたあとも、ミソサザイの軽さが、不思議な実体として手の中に残っているようでした。
4月、5月と身内(母)や親友が亡くなることが続きました。母が息をひきとる直前、病室の引き出しにあった私への応援のメッセージをみつけ、涙があふれました。最後に手を握り、感謝を伝えました。その手はミソサザイのように軽く、もうすぐ魂が離れることを伝えていました。多くの優しさと愛だけを残して、二人は旅立っていきました。
私が学生の頃の制作途中の木彫(母をモデルにしていたもの)を、母は捨てずにとっていました。そこから使える部分を切り出して、この作品を制作しました。ミソサザイが一礼してから、自由になって、飛び立つところイメージしています。
母は私の自宅で抗がん剤治療をしていましたが、彼女が休んでいた部屋のベランダに、今、スズメの幼鳥がきています。もう20年近く餌付けしており、あのスズメたちは半分家族のようなものです。毎年この時期、数羽の幼鳥(羽がボサボサしてひとまわり大きくみえます。ピィピィ鳴いてそばの成鳥に口まで餌を運んでもらおうとします←写真右)この作品は、そのスズメの幼鳥たちも参考にしています。
毎年桜が咲き、新しいスズメの命が生まれ、イチョウの木が若葉に覆われます。自然の営みの繰り返しそのものが、大いなる救いなのだな、としみじみ思います。