エルフ Elf

制作過程

子供の頃好きだった絵本に「かたあしだちょうのエルフ」(小野木学、ポプラ社 1970年)がある。自らの身を犠牲にして動物の子供達を救う話だった。助けたことによって片足を失ったエルフは、少しずつまわりから忘れられていく。片足で草原に立ちすくむ孤高のエルフの姿が、救出劇よりも強烈に胸に焼き付いていた。最後、立ち続けたエルフは一本の木になり、その下には涙のような池ができる。

彫刻にとって「立つ」という言葉は深い意味がある。先日癌を患った先輩が「病室の花瓶にさしてあった葉をみて『立つ』ということがわかった気がした。立っているな。生きているんだな、って思ったよ」と語っていた。

存在している、という感覚。こちらに向かって「命の気配」が飛び込んでくる様子。広大な空間の中で立ち続けるエルフのイメージは、私の彫刻観に深い影響を与えているのである。

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