青年海外協力隊(美術隊員)として、中米のコスタリカに派遣されたことがあります。そこにオフシオナルという海岸があり、満月の夜には約1000匹のウミガメが産卵にくると言われています。私はその海岸で、はじめてウミガメの産卵をみました。一番胸に響いたのは、卵を埋めた後の母親のしぐさです。重そうな甲羅ごと後ろ足をゆっくり持ち上げ、土を踏み固めるのです。母ウミガメは、産後で憔悴しきっています。しかし産んだ卵が外敵に狙われないように、何度も何度も後ろ足で地面を叩くのです。二度と会うことができない我が子への想いが、痛いほど伝わってきました。命はすべて、このような想いや行動から繋がってきたのだと、改めて感じました。
生まれ死ぬことで、命は終わりではないような気がします。ひとつの生を越えて繋がっていくものを、私は「心の命」とよびたいのです。
様々な循環と関わりの中に、自分が存在することを実感するとき。自らの痛みを魂の滋養にかえ、他者の痛みによりそうとき。他者の喜びのために、心をこめて行動するとき。
心の命は少しずつ豊かになっていき、死生の彼方へ私たちを運んでいくような気がします。
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