2016年より、熊本震災支援として「板倉の家ちいさいおうちプロジェクト」を行っている。→プロジェクト趣旨 阿蘇の森づくりと、板倉による復興住宅づくりを繋げる取り組みである。この作品は、熊本県阿蘇郡西原村のシンボルである雉(キジ)をモチーフにし、復興支援のため寄贈を念頭に制作した。西原村のホームページ(→HP)では、シンボルであるキジを「野火に自分の羽を焼かれても子を守る情愛の深い鳥」として紹介している。
制作する際、インドに古くから伝わるジャータカ物語のひとつ「雉の火消し」を参考にした。ジャータカ(本生譚)とは、釈迦の前世の逸話を集めたものである。昔、火災に巻き込まれた林と生き物を守るために、1羽のキジ(釈迦の前世)が、翼に水をつけて火を消そうとした。帝釈天が、翼のしずくで大火を防ごうとする虚しさを示唆しても、キジは自分にできる最善のことをやり続ける。そこから「精進」という言葉が生まれたとする。
震災の大きさに対して私にできることは何かと問うた時、その小ささに嘆息する。しかしながら、キジの毅然とした行いに勇気付けられる思いがした。この作品は、目の前の火に対して翼の水を振りかけている姿を表現している。またこれは、あらゆる災禍の侵入を防ごうとする佇まいでもある。私にとって、鳥が羽を広げた形は、十字架のように救済をイメージさせるのである。