「猫の時」 Time of the Cat
 日本の都市生活の中で、檻や鎖につながれずに闊歩できる動物は、いまや猫しかいないようである。野良猫たちは人間に迎合せず、干渉せず、自由生活を営んでいる。私のようなものつくりにとって、彼らは「束縛のない身体の動き」を観察できる数少ない生き物のひとつである。日常風景で目にする生き物が「人間」だけになったならば、その世界はさぞかし孤独と閉塞感に満ちたものとなるだろう。自らの種以外の命の受容こそが、「愛」といわれる概念の始まりだったのかもしれない。人間にとっての動物存在の意義を、猫があごを掻く仕草をみながら、ふと考えた。

 

福岡女子大学図書館に設置

Homealbumexplain・mail)