Control

音場の能動制御

音を音で制御することができます。能動制御と呼ばれる方法です。これまで,望ましくない音を消去する目的で議論されることが多かった手法で,例えばダクト内の低周波騒音や,プロペラ航空機の客室内での制御など,限定的な音場では大きな効果が得られています。

我々の研究室では,評価関数を音響インピーダンスなどに設定し,音場の方向性を能動的に変化させることに取り組んできました。やや複雑な定式化と,粒子速度の測定が必要になるため,実用化にはもう少し時間がかかりそうですが,小規模な空間での定在波の解消などに有効であることは確認できています。

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定在波の生じた空間で,任意の方向にエネルギーの流れを生じさせることができる。アニメーションの例はこちら:100rolling_cont

 


反射率可変の壁面音響システム

あまり意識されていませんが,吸音材料は音のエネルギーをよく透過します。実際に音のエネルギーを熱に変えてしまうこともありますが,多くのエネルギーを入射側に返さないことで吸音を実現しているのです(室内で一番効率のよい吸音は,窓を開けることです)。この性質を利用して,吸音材の後ろから音を放射するスピーカシステムを考案しました。吸音材の前で入射音を検出しておき,適切な響きなどを付けて裏側から任意の大きさで放射すれば,見かけ上反射率が可変になったように振る舞います。このシステムを,Variable Reflection Acoustic Wall System: VRAWSと称しています。

VRAWS 






スピーカの近くにマイクを設置するため,ハウリングキャンセルは欠かせません。現在はLMSなどの適応信号処理で最大限の効果を得ることを試みています。




VRAWS適用例








スタジオなどの小規模な空間での反射音調整,楽器練習室を少しライブ会場に近づけるなど,色々な利用方法が想定できます。






幾つかのモデルを経て,最近はGenelec 8020を3台並べたアレイと吸音材料の組み合わせを使うことが多くなってきました。G-VRAWSと称しています。設置する数を増やして,実験的なコンサートへの利用も試みています。

G-VRAWS

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挑戦的な試みとして,方向別の残響成分を収録し,原音に加えることも試みています。リバーブルームのライブ版です。24方向で収集した情報を24方向から再生する「録って出し」ですが,雰囲気をガラリと帰ることも可能です。