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音場の計測・評価・制御を研究活動の3本の柱と考えています。最近では特に「音場再生」をメインのテーマにしています。

多用途音場再生システムの総合的な性能向上に関する研究

音場再生システムは,コンサートホールなど美しい響きを伴う場の再現から,騒音を制御するためのシミュレータまで,広範囲の目的に用いることができます。このように多用途のシステムが備えるべき性能とは何かを考える課題に取り組んでいます。現在,以下の4種類の条件を満たすことが必要ではないかとの仮説に基づき,様々な手法を試みています。

 A) 再生が何らかの物理的原理に基づくこと  
 B) 聴取者の存在などの外乱に対して頑健であること  
 C) 他の録音とのミキシングや残響の付加など,付加的な演出を受け入れられること  
 D) 映像情報との親和性が高いこと 

プラットフォーム

具体的な課題に取り組むために,24本の鋭指向性マイクロホンを水平角45º,仰角45ºごとに「はりねずみ状に」配置したマイクアレイと,同数のスピーカを3層に配置したスピーカアレイを採用しています。22.2チャンネルとの親和性も高く,最近の多チャンネル芸術作品の再生にも用いることが可能です。

システムの基本的な考え方

良い性能,良い音質のマイクロホンで収録した音を,方向の情報を含めて,できるだけ良い状態のまま良い性能のスピーカから再生することを目標としています。このために,はりねずみマイクで収録した音を,おおよそ対応する方向のスピーカから再生する「録って出し」をベースとし,マイクの指向性が十分ではない低周波数において,最低限の信号処理を行うことを試みています。
具体的な信号処理としては,以下のようなものを採用しています。
 ・低域を制限するイコライザ
 ・境界音場制御の原理を実現するための再現音場における逆フィルタ処理
 ・鋭指向性マイクに対応した混合次数アンビソニックス
 ・ビームフォーミング

卒業研究や修士研究での取り組み

上記の仮説それぞれに対応して,以下のような課題を設定し,卒業研究,修士研究などで解決を目指しています。
 ・逆フィルタの性能向上やフィルタ数削減に関する研究
 ・音場再生システムにおける音響材料の吸音率測定に関する研究
 ・ステレオ,サラウンド収録信号とのミキシング
 ・再生音場での残響付加
 ・方向別インパルス応答のみを用いた再生手法の試み
 ・360度円周画像との同時再生に関する研究

今年度の研究メニュー(暫定版)はこちらです。

これまでの取り組み
音楽を用いた創造・交流活動を支援する聴空間共有システムの開発

東京電機大学,明治大学,情報通信研究機構と共に,科学技術振興機構 CREST プロジェクトを進めていました。 http://www.bosc.jp 80チャンネルマイクロホンアレイと96チャンネルスピーカを有する音響樽との組み合わせで,超高精細な音場再生システムを実現し,これをネットワーク等でつなぐことで,離れた場所において音場情報を共有することを目指したものです。 九州大学の役割は,再生コンテンツのためのデータベース構築ですが,同時に「音積木」と呼ぶ48チャンネルの簡易的な再生システムも構築してきました。オフィシャルな研究期間は終了しましたが,引き続き音響樽を使って,逆フィルタの性能検証や,音場再生に適したコンテンツ探求などの研究を進めています。