ホールの全席測定による特徴の可視化
ホールの特徴を表すために,インパルス応答が測定され,各種物理指標が算出されます。ISOでは,その受音点に関して最低限の数が決められているものの,適切な数は現場に応じて考えるひつようがあります。本研究では,そのような場合の基礎データとなることを意図して,できるだけ多くの座席位置での測定を試みたものです。
僅かな温度変化やその他の要因で誤差が増えるものの,指標の全体的な分布を把握するためには有効であることがわかりました。また実際にインパルスが室内をどのように伝搬していくのか,可視化(サンプルはこちら:0.5sec-5-137)することも可能です。
あるホールでのEDTの分布です。左右非対称は音源の指向性が不十分だったことで生じているようですが,席による響きの違いがある程度見て取れます。
聴覚フィルタを用いた音場評価
通常音場の測定を行った場合,1/3オクターブバンドや1/1オクターブバンドフィルタで帯域分割して,周波数ごとの値を得ます。このフィルタの代わりに,聴覚フィルタを導入することを試みました。大雑把に言って,聴覚フィルタは時間領域でゆっくりの特性を持ち,また周波数特性においてもブロードな特徴を持っています。このように「ゆるい」フィルタを通すことで,人間の評価に近い値が得られないかとの試みです。
ある音場で測定したインパルス応答を聴覚フィルタに通したものから減衰の様子を推測しています。レベルが60dB減衰するまでの時間を求めたところ,通常の帯域分析で得られる残響時間ではなく,初期減衰時間 (EDT) に近い値が得られました。EDTは人が感じる残響感と相関が高い指標です。
UAD : Uniformity of Arrival Direction
VSVや鋭指向生マイクアレイで計測した結果から,擬似的に等立体角分割して方向別のエネルギー到来量を算出します。可視化による定性的な評価に加えて,定量的な比較検討なども行うことが可能になります。
さらに,UADを時変の値と考えて,その変動を評価することも試みています。24チャンネルマイクの出力をそのまま用いた評価も可能です。
いろいろな音源に対しての検討結果例です。特徴的な変動の様子が示されています。