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経済産業省の最近のデザインに関する取組/デザインを保護する『意匠権』 特許庁の意匠行政について

 2024年12月12日(木)、芸術工学研究院の教員が参画する九州大学未来デザイン学センター主催、九州大学が会長大学の国公立デザイン系大学会議共催のもと、「国が取り組むデザイン行政」をテーマとした講演会を大橋キャンパスで開催しました。本講演会には、経済産業省 文化創造産業課 デザイン政策室 室長補佐の中村純典氏と、特許庁 意匠課 企画調査班 意匠分類企画係長の奈良日向子氏の二名を講師としてお招きし、ご講演をいただきました。
 今回の講演会は、現地参加とオンライン参加を併用したハイブリッド形式で実施しました。当日は本学の教職員や学生に加え、国公立デザイン系大学会議のメンバーである筑波大学、富山大学、佐賀大学、秋田公立美術大学からのオンライン参加も含め、約30名の方々にご参加いただきました。


 最初に登壇された中村氏からは、「経済産業省の最近のデザインに関する取組」というタイトルで、デザイン政策の全体像や背景、具体的な取組について詳細にご説明いただきました。特に、「デザイン政策研究・提言」「調査研究」「業界団体や地域との連携」「表彰や後援」といった現在デザイン政策室で講じている施策の概要に加え、1928年に東北仙台で商工省工芸指導所が設置されて以来、戦後のGマーク制度導入と変遷、民営化や各時代におけるデザイン政策提言等、現在までのデザイン政策の歩みが、具体例を交えながら分かりやすく解説されました。また、デザインやデザイナーの定義の変遷、拡大・分化するデザイン領域についても触れられ、さらには各国や地域のデザイン政策の比較や、デザインカウンシルの国際間での機能の比較などの示唆に富む内容が紹介されました。

中村氏


 続いて登壇された奈良氏は、「デザインを保護する『意匠権』 特許庁の意匠行政について」というタイトルで講演が行われました。意匠権の基本的な考え方や仕組みについて、「身の回りの製品デザイン」や「意匠とは何か」といった基礎的な解説から、「意匠権登録出願の動向」や「意匠権を取得するための手続」について説明が行われました。また、意匠権の活用事例について具体例を挙げながら説明がなされ、参加者にとって実践的な理解を深める内容でした。さらに、「仮想空間(メタバース)と意匠制度」や「生成AIと意匠制度」に関する最新の議論、国際連携活動、意匠制度の普及・啓発活動についても詳細に触れられ、これらの施策がどのようにデザインの発展に貢献しているかが具体的に示されました。最後に、デザイン系国家公務員としての意匠審査官という職業の紹介もあり、特に学生参加者にとってキャリアの選択肢を広げる貴重な情報が提供されました。

奈良氏


 日本におけるデザインは、しばしば産業振興の観点から語られることが多いものの、今回の講演会では、デザイン行政という広い視野からそのあり方を改めて考える機会を得ることができました。限られた時間ではありましたが、講師のお二人の示唆に富む講演内容により、参加者一同にとって大変有意義な場となりました。

講演会の様子


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