
大学院芸術工学府 未来共生デザインコースの張航さんが、以下のとおり展示を開催中です。
ぜひご覧ください。
EQUINOX 空想植物CG展覧会
会期| 5月7日(水)〜5月16日(金)
会場| 九州大学大橋キャンパス 1号館2F ギャラリー
私たちはいま、地球という「条件のそろった惑星」で生きています。温度、湿度、大気の組成、重力──それらが整っているからこそ、植物は光合成をおこない、土壌と水を循環させ、生命の連鎖がつながっています。
本展は、その「当たり前の前提」を静かに問い直します。
もし、異なる環境──たとえば重力が軽い星、昼と夜のリズムが異なる星、大気中の成分が異なる星──が存在したとしたら?
そこでは、どのような「植物」が根を張り、どのような「自然」が息づいているのでしょうか。
そして、私たちはそこにどう共生しているのでしょうか。
本展は、Design Fiction(デザイン・フィクション) の視点から、空想的な惑星環境を設計し、そこに育つ未知の植物や生態系をCGで表現した実験的展示です。科学的合理性を失わずに、あえて物理条件を少しずつ「ずらす」ことで、架空の惑星を描き出しました。
単なるファンタジーではなく、物理法則や生態学的ロジックを踏まえた上で、「重力が軽い」「昼夜の周期が極端に長い」「大気中の成分が異なる」「土壌に含まれる元素が地球とは異なる」などのパラメータを意図的に変化させています。それによって、「もしこの条件下に植物が存在するとしたら、どのような形態や機能を持つか?」を理論的に推論し、科学的合理性に基づいた異形の自然像を描き出しています。
たとえば、重力が小さい惑星では、地球上の植物よりもはるかに背が高く、構造が繊細な植物が成立しうるかもしれません。あるいは、光のスペクトルが異なる星では、葉の色素が紫や黒に近いものになる可能性があります。こうした仮説的環境に、どのような植物が適応し、どんな生態系が成立するのかを、思考と表現の往復運動を通じて可視化したのが本展です。
空想ではありますが、そこには現実世界の自然や人間の営みへの深い洞察と問いかけがあります。
見慣れない植物の形や振る舞いに、私たちは「なぜ、地球ではそうでないのか?」という逆向きの想像力を働かせることになるでしょう。
ようこそ、もう一つの春分点(EQUINOX)へ。
ここは、現実と空想の境界を揺らす、もうひとつの「自然史博物館」です。


