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維度消融 – Dissolving Dimensions ACF Global Project|展示企画 in 台南

芸術工学部 音響設計コース 4年の林朋紘さんとメディアデザインコース4年の山元汰央さんが、台湾・台南のアートスペース「絶対空間 Absolute Space for the Arts」にて、展示を開催中です。

2人は、Artist Cafe Fukuokaの公募企画「Global Project|展示企画 in 台南」に採択され、派遣アーティスト(ユニット)「山元汰央と林朋紘」として、展示「維度消融 – Dissolving Dimensions」を開催する運びとなりました。

Artist Cafe Fukuoka(ACF)は、福岡市が運営するアーティストのための成長と交流の拠点です。「世界で活躍するアーティストの輩出」を目指し、これまで多様な成長支援や交流の機会を提供してきました。アーティスト自身が主体的に活動を展開できる場を広げるため、国内外のアートスペースとの連携による発表機会の創出にも取り組んでいます。



維度消融 – Dissolving Dimensions

ACF Global Project|展示企画 in 台南


会期:2025年10月11日(土)〜11月9日(日)
キュレーター:黄徳馨(ファン・ダーシン)
アーティスト:山元汰央と林朋紘
会場:絶対空間 Absolute Space for the Arts
オープニング・パフォーマンス:2025年10月11日(土)15:00 ※実施済み
トークイベント:2025年10月11日(土)16:00 ※実施済み


ステートメント
「維度消融 – Dissolving Dimensions」では、空間経験や感覚の構造、時代のイメージを出発点に、テクノロジーの加速と文化の交錯が進む現代において、人間の知覚がどのようにメディアによって浸透され、再構築され続けているのかを探る。本展が提示するのは、単一の空間形式の再現ではなく、アーティストたちが映像・写真・音を通じた実践によって、感覚をいかに動的で生成的なプロセスとして顕在化させるかという点である。

本展では2名のアーティストが、それぞれ「感覚の出来事」に向き合う。
山元汰央《555 bugs》は、観客の接近や遮蔽、移動に応じて音響が即時に変化する。無機質な回路から生じた音は、観客の介入によって有機的なリズムを帯び、身体は回路の一部として巻き込まれていく。観客はもはや傍観者ではなく、音の生成に関わる存在となり、そこには生命と非生命の間に揺らぐ「中間態」が示される。
林朋紘《見えないものを聴く》は、同時に記録された写真と音声を並置することで、静止した映像に時間の流れを持ち込む。観客は「見る」と「聴く」の往復のなかで、単なる再現ではなく、感覚の中で常に組み立て直される世界を体験する。映像と音の交錯は、知覚そのものが固定されたものではなく、絶えず生成され続ける過程であることを気づかせる。

哲学者モーリス・メルロー=ポンティが語る「身体による知覚」に即して言えば、感覚とは受け身の入力ではなく、身体と世界の相互作用によって生成される経験である。山元の作品は身体がいかに物と音の生成に関与するかを示し、林の作品は映像と音が感覚の中で再編成される過程を明らかにする。両者は観客を「感覚の生成」の中心に置く。

さらに、これらの作品は「容器」としても捉えられる。それは閉ざされた器ではなく、限られた境界のなかで外界と絶えず交換・吸収・放出を繰り返す流動的な界面である。環境から影響を受けるだけでなく、逆に新たな感覚の秩序を生み出す力を持つ。展覧会はそのような感覚の現場として、明確な境界を溶解し、観客を哲学的な問いへと立ち会わせる。――身体を「流通する容器」として捉えるとき、私たちは現代社会における存在と感覚の関係をいかに再考できるのだろうか。

文/黄徳馨(ファン・ダーシン) キュレーター


主催:Artist Cafe Fukuoka
共催:絶対空間
運営:東益アートデザインスタジオ
協賛:台南市政府文化局、国藝会(国家文化芸術基金会)
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