環境設計部門のULLAH S M Asik助教が東京大学 坂本麻衣子准教授、九州大学 谷正和名誉教授と共著した論文「Impacts of refugee influx on the local economy and environmental degradation in Bangladesh: A spatial multilevel autoregressive analysis」が、World Development誌に掲載されました。World Development誌は、抄録および引用データベースScopusのCiteScore上位2パーセントに常にランクインしている定評のある開発研究誌です。
過去10年間で、強制避難民の数は着実に増加しており、ロヒンギャ難民危機はその顕著な例です。約70万人のロヒンギャ難民がミャンマーから逃れてバングラデシュに避難したことで、受け入れ先のコミュニティは、経済的、社会的、環境的に大きな影響を受けています。
本研究では、ロヒンギャ難民の流入が、バングラデシュのテクナフ・ウパジラ地域の地元住民の生計、収入、環境破壊へどのような影響を及ぼしたか調査しています。難民流入前後の5,769世帯および6,825世帯を対象に調査を行い、リモートセンシング画像を使用して土地被覆図を作成し、包括的な環境評価を行いました。
主な調査結果は以下の通りです。
・ 農業や労働作業に従事している人々を中心に、収入が大幅に減少した。
・ 競争が激化したことで、小規模農家は農業を追われた。
・ 受け入れ先のコミュニティは天然資源に大きく依存しており、その結果環境破壊が悪化した。
地理的・地形的な問題により、救援活動の恩恵を受けられない地域があり、現在の人道的対応とのギャップが浮き彫りになりました。こうした課題に効果的に対処するため、今後の人道支援戦略には持続可能性の高いアプローチの導入が必要であることが、本研究によって示されました。