学生作品・研究

消えた1本と永命する8本

公開日 :2024.09.27

岡坂宗一郎 田上孝明 吉澤里奈

環境設計学科 ※制作時所属

受賞作品

制作時学年
学部4年
 福岡市南区にある桧原桜公園の拡張整備を行うにあたり、桧原桜をテーマとしたモニュメントが募集された。私たちは桧原桜公園に伝わる『桧原桜物語』というエピソードをメタファーとした「記憶を未来へ繋ぐモニュメント」を提案した。

 『桧原桜物語』とは、昭和59年3月、樹齢50年のソメイヨシノ9本が道路拡幅工事により伐採されるという計画があった際の話だ。とある住民が一首の和歌を桜の木に括り付けたことで話題となり、計画の見直しが行われることで、桜の木8本が命永らえることができたという粋なエピソードである。ただ、1本の桜の木は既に伐採されてしまっており、現在残っているのは8本のみであるため、いつかは1本だけが忘れ去られてしまうかもしれない。それは少し寂しいと思い、この物語を具現化したようなモニュメントを作れないかと考えた。

 消えた1本の桜が忘れ去られることなく、8本の桜とともに記憶の中で生き続けてほしいという願いを込めて、8本の幹が支え合って1本の木に成るような形としている。また、中心には孔が開いており、空へと想いを馳せるような場を作った。素材にはコールテン鋼を想定しており、公園とともに落ち着いた色味へとエイジングしていくことで地域に馴染んでいき、地域の象徴として愛されていくことを期待した。

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「桧原桜公園モニュメントデザイン画募集」優秀賞 受賞