紀要「芸術⼯学研究40号」を発⾏しました

研究紀要「芸術⼯学研究40号」を令和7年3⽉31⽇付けで発行しました。

掲載論文等は「九州大学学術情報リポジトリ」からダウンロードしてご覧いただけます。
また、冊子PDFは芸術工学部Webサイトの紀要『芸術工学研究』ページでご覧いただけます。


【40号⽬次】

研究論文(翻訳)
Addressing Causality:
Participatory Evaluation on Improvisational Drama Workshops for People with Dementia and Their Carers(日本語版)
因果関係の解明に向けて
―認知症の人たちとケアスタッフを対象とした即興演劇ワークショップの参加型評価
|中村美亜、勢島奏子、櫻井香那、長島洋介、YAO Yaya

研究報告
西洋音楽における楽器模倣と音響表現の多様化
―人間と機械の相互形態模写の側面から
|松宮圭太

GEIKO EXPO 2024 特集
芸工研究交流発表会 GEIKO EXPO 2024
|張彦芳、元村祐貴、羽山康之

Glocalized Pedagogy: Theater as a Tool for Teaching Non-Verbal Communication and Intercultural Skills
|ZARINS Martins

グリーンストラクチャーとブルー・グリーンインフラ:ネットワーク型の緑と雨水
―自身の研究・作品についての GEIKO EXPO 2024 での発表の概要―
|木藤健二郎

「世界創造としてのデザイン・ナラティヴ」という発想
イタリアの物語ドリブンのデザインアプローチの研究からの視座
|羽山康之

Navigating Technology in Foreign Language Education
A Retrospective Journey from Isolation to Community
|BLANCO CORTES Laura Maria

ゴシック聖堂における螺旋階段の外観
通行システムの研究に向けて
|嶋﨑 礼

バーチャルリアリティ環境への応用を目的とした触覚提示手法:
自身の研究紹介と GEIKO EXPO 2024 での発表の概要
|亀岡嵩幸

研究センター報告
社会包摂デザイン・イニシアティブ2024年度活動報告
|知足 美加子、尾方 義人、中村 美亜、長津 結一郎

表紙作品
栗山 斉,《afterglow》(部分),2015 年,
     鏡、針金、社の石垣,サイズ可変
©Hitoshi Kuriyama

参照リンク

紀要「芸術工学研究」

 『芸術工学研究』は、 平成15(2003)年10月に九州芸術工科大学と九州大学が統合されたことを機に、 それまで九州芸術工科大学において有志によって刊行されていた論集を、 同一誌名ながら巻号を新たにし、九州大学大学院芸術工学研究院の研究紀要として発刊することとなった雑誌です。本誌は、九州大学大学院芸術工学研究院における多様な研究活動や実践的取り組みを広く発信する場として、多くの皆様のご協力のもと、内容の充実を図ってまいりました。本誌では、学術的成果に加え、実践的・創造的なプロジェクトや多様な活動記録も積極的に収録しており、芸術工学の学際的な特性がより際立つ内容となっています。

 バックナンバーはすべて九州大学学術情報リポジトリ(QIR)にて公開しており、多くの方々に広くご覧いただけるようになっております。また、冊子PDFは、以下のアイコンをクリックすると閲覧できます(26・27号以降の閲覧可)。

九州大学学術情報リポジトリ(QIR)ページ

芸術工学研究(九州芸術工科大学「芸術工学研究」編集委員会編):1-6号(1999-2003)
芸術工学研究(九州大学大学院芸術工学研究院紀要「芸術工学研究」編集委員会/編集ワーキンググループ編):1-40号(2004-2025)

紀要一覧(冊子PDF)

40号 [2025.3発行]

39号 [2024.3発行]

38号 [2023.3発行]

37号 [2022.11発行]

36号 [2022.3発行]

35号 [2022.10発行]

34号 [2021.3発行]

33号 [2020.11発行]

32号 [2020.3発行]

31号 [2019.10発行]

30号 [2019.3発行]

29号 [2018.10発行]

28号 [2018.3発行]

26号・27号 [2018.1発行]

【重要】令和7(2025)年度 博士後期課程入試【2025年10月入学(2次募集)】及び 令和8(2026)年度 博士後期課程入試【2026年4月入学(1次募集)】募集要項を公開 しました。

詳細は以下参照リンクからご確認ください。

参照リンク

【重要】令和7(2025)年度 修士課程 自己推薦入試(2025年10月入学)、令和8(2026)年度 修士課程 自己推薦入試(2026年4月入学)及び令和8(2026)年度 修士課程 一般入試(2026年4月・10月入学)募集要項を公開しました。

詳細は以下参照リンクからご確認ください。

参照リンク

ストラテジックデザインコースの学生が「第10回・医美同源デザインアワード」で大賞を受賞

大学院芸術工学府ストラテジックデザインコース修士1年生の添田翔馬さんと宮里華奈さんが、「第10回・医美同源デザインアワード」において大賞を受賞しました。

医美同源デザインアワードは、一般社団法人菊地誠22世紀医美支援事業団が主催するコンペで、「入院生活を豊かにするデザイン」をテーマに作品を募集しています。
今回、大賞を受賞した作品『あつめて!ホスピタン』は、小児患者の「わからない・怖い気持ち」に寄り添い、入院生活をポジティブに変容するプレパレーション用コンテンツです。
本作品は、2024年度の芸術工学府の授業「スタジオプロジェクトⅠ-Ⅳ(担当教員:秋田直繁,松隈浩之,工藤孔梨子,富松俊太,平井康之)」の九州大学病院(医系地区)・国際医療部との共同プロジェクトにおいて制作されました。

また、2025年3月14日に金沢21世紀美術館で開催された「第10回医美同源シンポジウム」にて、両学生が受賞作品のプレゼンテーションを行いました。
参照リンク

ADAAクリエイターズトーク「明和電機会社説明会」開催報告

九州大学大学院芸術工学研究院ナラティブデザイン講座は、2025年3月7日、福岡市美術館にて「明和電機会社説明会」を開催しました。登壇者は、芸術ユニット「明和電機」代表取締役社長の土佐信道氏。明和電機は青い作業服を着用し、作品を「製品」、ライブを「製品デモンストレーション」と呼ぶなど、日本の高度経済成長を支えた中小企業のスタイルで、生命と機械を掛け合わせたナンセンスマシーンの数々を開発し、ライブや展覧会など、国内のみならず広く海外でも発表しています。
今回のトークイベントは、同会場で開催されていた「アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA受賞作品展」との共催で行われ、デジタルアートの展示作品と親和性の高い土佐氏の作品について、演奏を交えながらお話いただきました。

イベントは、明和電機が制作したナンセンスマシーンの演奏から始まりました。明和電機の代名詞でもある音符の形をした「オタマトーン」、押すとビートを奏でる寿司型の「SUSHI BEAT」、荷造り用のゴムバンドを弦に使用した「ゴムベース」が、実演とともに紹介され、土佐氏のパフォーマンスに会場は大いに盛り上がりました。
トークの後半では、明和電機の歴史についての講演が行われました。土佐氏が幼少期に影響を受けた経験から大学での活動、明和電機会長とのユニット結成までのストーリー、オタマトーン完成秘話、そして今後の展望について語られました。


土佐氏は、あるとき声が持つ「機能性」と、人の心を掴む「呪術性」という二つの特性に楽器としての面白さを見出します。そして、声を出す生物的な機械彫刻を電子的ではなく機械的メカニズムで制作し、ボイスメカニクスシリーズというナンセンスマシーンを続々と発表。声が持つ不安定をどうにか修正しようとする魅力を機械で表現すべく、歌手として歌声を再現しライブステージを行う「セーモンズ」、人工声帯の音をパイプの開閉によって変化させて「犬」のように吠える機械「ディンゴ」、息を吹き込むと犬が吠えるような音が鳴る「チワワ笛」、はずみ車の回転エネルギーを使ってふいごを動かし、その風力で人工声帯を鳴らし人間のように笑う「ワッハゴーゴー」を開発してきました。そしてついに、2010年に誕生したオタマトーンへとつながっていきます。
オタマトーンの構想については、デザインや仕組み、構造、名称、パッケージイメージに至るまで、採用されなかったアイデアも含めて、土佐氏が描いた数多くのスケッチ画に落とし込まれていました。会場では、「ワッハゴーゴー」の笑い声に誘われ、多くの笑い声が起こる場面もありました。

これまで「魚」から「花」、そして「声」へと、活動テーマは年齢とともに変遷してきましたが、土佐氏が次に掲げるテーマは「箱」。講演の最終章では、今後の展開として明和電機が「箱」に着目していること、そしてそのきっかけとなった中国・北京でのリモート展示設営の事例について語られました。
2020年、コロナ禍の影響により全リモートでの展示設営を決断した際、どのようにオンラインで現地のスタッフと準備を進め、作品を輸送し、設営を行ったのか。様々な課題を解決するため、「明和電機コンテナ計画」が立ち上げられました。この計画では、輸送時にかさばる多数の箱を縦型の同一規格コンテナに統一し、展示什器やステージとしても活用できるアイデアが盛り込まれました。さらに、テーマカラーで着色しユニット化することで、施工作業を簡略化し、土佐氏のイメージ通りの空間づくりをリモートで行える仕組みを作りました。その結果、遠隔地からでも現地のスタッフに的確な指示を伝え、展示は成功を収めました。
そして現在、土佐氏はナンセンスマシーンをスーツケース2箱にまとめ、全国を巡る一人ライブツアーという新たな挑戦に取り組んでいます。このツアーに向けて、すべての楽器を折り畳んでスーツケースに収められるようにする開発が1年かけて行われました。

最後に土佐氏は、「出発点にあるのは、『声って何だろう』『箱って何だろう』という、もやっとした感覚、何とも言えない世界の感じ方がアートなのだと思う。それを絵に描くのが絵描きで、私の場合は論理で不条理なものを叩いていくとナンセンスマシーンができる。これを今もひたすら取り組んでいて、これからも続けるのだと思います。」と語り、講演は拍手喝采のうちに幕を閉じました。
今回の講演では、土佐氏のユーモラスな表現と作品にかける情熱が随所に感じられました。また、土佐氏の経験や関心といった感性的な側面と、試行錯誤を重ねる論理的な側面の両方が、ユニークな作品を生み出す要因であることを知る、貴重な機会となりました。
添付ファイル
参照リンク

【芸工公式YouTube】九州大学×福岡県聴覚障害者協会青年部 コンサート&公開講座「見える音楽?~だれもが楽しめる音楽を目指して~」動画を公開しました

2025年1月23日、聴覚障害のある人に向けたコンサートでの多様な情報保障を実験し、情報保障の未来について話し合うコンサート&公開講座「見える音楽?~だれもが楽しめる音楽を目指して~」を実施し、そのダイジェスト動画を芸工公式YouTubeで公開しました。

九州大学大学院芸術工学府では、様々なコースの学生が課題解決にむけて集まる科目「スタジオプロジェクト」を開講しています。2024年度開講のスタジオプロジェクト科目の一つ「ホールマネジメントエンジニアリングプロジェクト」では、近年増加している、劇場における情報保障などを通じ福祉的な配慮を行ったコンサートについて考案しました。 今回のコンサートでは、音がきこえる人もきこえない人も一緒に音楽を楽しめるようにするにはどうすればいいのか、九州大学大学院芸術工学府と福岡県聴覚障害者協会青年部がともに考えました。聴覚障害のある人に向けた、コンサートでの多様な情報保障を実験し、演奏後には公開講座の形式で、情報保障の未来について話し合いました。

■演奏曲目:
「登取」 作曲:河合 拓始
「あじミずモ」 作曲:河合 拓始
「ピアノ音楽・第二」 作曲:一柳 慧
「火水の儀」 作曲:河合 拓始

■演奏者:
河合 拓始(作曲家、ピアニスト)
上野 ゆみこ(打楽器)
内田 遼(トロンボーン)
栫 大也(オーボエ)
長津 結一郎(鍵盤ハーモニカ)

■登壇者:
鈴木 玲雄(福岡県聴覚障害者協会) Sasa/Marie(サイン・ポエット)
長津 結一郎(九州大学大学院芸術工学研究院准教授)

■撮影・編集:仁田原 力

■主催:九州大学大学院芸術工学府「スタジオプロジェクトIV-B(ホールマネジメントエンジニアリングプロジェクト) 」(指導教員:尾本章、長津結一郎)
■共催:九州大学大学院芸術工学研究院附属社会包摂デザイン・イニシアティブ
■後援:福岡市
■助成:一般財団法人曽田豊二記念財団、科学研究費補助金JP21H03764、JP24K03222、JP 23K17491、JP23K25142 JASRAC V-2419205

伊藤 慎一郎

津久井 智也

林 小百合

Guo Xuanru

水田 薫(旧姓:寺崎)